
北朝鮮の核潜水艦の脅威と韓国の核潜水艦開発方向

チョン・ソンジャン(世宗研究所副所長職務代行)
北朝鮮の戦略核潜水艦開発の急速な進展
北朝鮮は2021年1月、労働党第8回大会で戦略核潜水艦(SSBN)開発の意志を明らかにし、2025年3月にはSSBN船体の建造場面を公開した。核潜水艦(核潜)開発は、驚くほど早い展開を見せている。2021年1月に金正恩は「新しい原子力潜水艦設計研究が終わり、最終審査段階にある」と明らかにした。
そして「核長距離打撃能力を向上させる上で重要な意義を持つ核潜水艦と水中発射核戦略兵器を保有することに対する課題」を国防力発展「5大重点目標」の一つとして提示した。金正恩は2023年12月に再び党中央委員会全員会議で「第2次艦船工業革命を起こし、海軍の水中および水上戦力を向上させ、国防力発展5大重点目標遂行によって不十分な課題を早期に執行することを中心課題として提示」することで、原子力潜水艦開発に拍車をかけるという意志を示した。
この時まで、北朝鮮の外部世界では、北朝鮮の核潜水艦開発が難航していると推測していた。ところが、北朝鮮は2025年3月、労働党機関紙「労働新聞」を通じて「核動力戦略誘導弾潜水艦」(戦略核潜水艦)の建造場面を公開することで、近い将来に水中に基づいた核兵器第2撃能力(Second-Strike Capability)を保有することになると予想される。

北朝鮮にとって、SSBN開発は非常に高難度の課題であるが、ロシア・ウクライナ戦争への派兵の見返りに北朝鮮がロシアから小型原子炉技術を提供受けた場合、SSBN保有は時間の問題となるであろう。一部の専門家はロシアが核潜水艦関連の技術までは北朝鮮に提供しないと主張している。しかし、ロシアは1990年代に韓国に関連技術を提供したことがあり、インドに核潜水艦を貸与して核潜水艦開発を支援した経緯がある。
北朝鮮が2025年3月に公開した戦略原子力潜水艦の建造写真を見れば、人対比による船体の大きさ、支え木の数量などを考慮すると、5,000~10,000トン級の規模と推定される。この程度の排水量を持つ潜水艦を安定的に運用するためには、推進動力が核燃料を基盤としなければならない。
戦略核潜水艦は、隠密的な長期作戦が可能なので、北朝鮮は米国の戦略核潜水艦であるオハイオ級潜水艦に匹敵する最小限の機能を備え、相互確証破壊(MAD)能力を備えようという意図を持っているものと判断される。北朝鮮の船舶製造能力は韓国に比べて大きく遅れているが、北朝鮮は潜水艦保有数においては世界1位を占めるほど多くの潜水艦建造経験がある。
そして、金正恩の核潜水艦開発の意志が確固たるものであり、国家財政を全面的に投入しているため、近い将来、戦略潜水艦を保有する可能性が高い。北朝鮮が戦略核潜水艦を完成すれば、これは韓米同盟と韓日の核安全保障に相当な影響を及ぼす「ゲームチェンジャー」となりうる。
北朝鮮が米本土を攻撃できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の力量を保有したのに続き、米本土の前まで航行できる戦略原子力潜水艦を保有するようになれば、韓国に対する北朝鮮の核EMP弾、または核兵器攻撃の際、米国の対応は制限されるしかない。
戦略核潜水艦は、北朝鮮が米国と韓国を相手に、より高い信頼性を持って核の脅威をもたらす手段を提供することになり、従来の地上基盤体系よりも、核による強圧的手段としての効用性を高めることになる。
韓国の原子力潜水艦保有の必要性
韓国が原子力潜水艦を保有することになれば、戦術核兵器を搭載した北朝鮮のディーゼルの中型潜水艦や未来の戦略核潜水艦をより効果的に監視し、牽制できるようになるだろう。核潜水艦は隠密性と攻撃および水中作戦能力で在来式潜水艦にはない長所を兼ね備えている。核潜水艦の最大速度は時速46kmであり、在来式潜水艦より最大3倍以上速い。
在来式潜水艦より規模が大きく、さらに多くの兵器を搭載できるというのも核潜水艦の長所である。このように核潜水艦がディーゼル潜水艦よりはるかに多くの長所を持っているため、米国は1990年代に従来のディーゼル潜水艦をすべて廃棄して核潜水艦と交替した。
韓国は現在、独自に潜水艦を建造し、輸出まで推進するほど発展した潜水艦の開発力量を保有している。韓国は3000トン級の張保皐(チャン·ボゴ)-III潜水艦の開発により、世界で8番目に中型潜水艦を独自設計·建造した国となった。張保皐-III潜水艦はリチウムイオンバッテリー、空気不要推進システム(AIP)、垂直発射管など世界最高水準の技術が集約されたディーゼル潜水艦で、国産化率80%を誇っている。この潜水艦は武装、潜航持続性、自動化性能などで高い評価を受けている。
原子力潜水艦の建造における主な争点の一つは、獲得費用である。一部の専門家は、原子力潜水艦の建造に天文学的な費用がかかるかのように主張する。しかし、同分野の権威ある専門家であるムン·グンシク漢陽大学兼任教授によると、韓国型原子力潜水艦の1隻当たりの建造費としては約2兆5千億ウォンがかかるものと推算される。
国産3000トン級ディーゼル潜水艦の1隻当たりの価格が約1兆ウォンであるため、原子力潜水艦がディーゼル潜水艦より建造費用が相対的に多くかかるのは事実だが、原子力潜水艦の効用性と戦略的価値を考慮すると、原子力潜水艦の建造費用が韓国政府の国防財政で手に負えない水準ではない。韓国は米国より人件費が安く、より短い期間に潜水艦を建造できるインフラを持っているため、韓国が原子力潜水艦を建造するには米国よりはるかに少ない費用がかかるだろう。
韓・米・日および国際協力の方向
もし、北朝鮮が近い将来において米本土まで密かに航行できる核潜水艦を進水させることができるようになれば、北朝鮮は確実な「第2格」能力を確保することとなり、韓米日の安全保障にとってより深刻な脅威となるであろう。
北朝鮮のこのような潜水艦脅威に対応するため、韓国と日本の原子力潜水艦の開発が急がれる。韓米日が共同で核潜水艦を開発し運用するという協力事業を推進する場合、これは米国の国益と東アジア戦略にも全面的に符合するであろう。韓国と日本が核潜水艦を保有することになれば、台湾有事の際に米国はこれらの国の核潜水艦支援を受けることができるのだ。
韓国政府は核潜水艦の共同開発及び運用に向けた韓国・米・日・英国・豪州のコンソーシアムの構築も考慮する必要がある。しかし、もしトランプ第二期の行政部が核潜水艦建造関連において韓国との協力を拒否すれば、韓国政府はブラジルのようにフランスとの協力を模索することが望ましい。
韓国はフランスの核潜水艦のように低濃縮ウランを利用した核潜水艦の建造を推進している。したがって、韓国は米国よりはフランスの核潜水艦運用経験からより多くのことを学ぶことができる。
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