ノースコリアンナイト(North Korean Nigths)

李 ソラKOA(NGOモドゥモイジャ)事務局長
「アラビアンナイト」こと「千一夜物語」は、私が北朝鮮で幼い頃から親しんだ本でした。
知恵と物語の力が残虐な習慣を変える可能性を示す話です。
ペルシャの王に、毎夜、妻が物語を語る形式のストーリーです。サーサーン朝の王シャフリヤールが、妻の不貞を知り、女性不信に陥ります。その後、毎晩新しい娘を娶っては翌朝処刑するという残虐な習慣を始めます。
大臣の娘シェヘラザードは、この状況を終わらせるため、自ら王の妻となります。彼女は毎晩、王に面白い物語を語り始め、話の続きを聞きたい王は彼女の命を助け続けます。シェヘラザードの妹ドゥンヤザードも、話を盛り上げる役割を果たします。この作戦により、1000日間にわたって王の残虐な習慣を止めさせることに成功します。

北宋の同胞を運送する万景峰号/ウィキツリー
北朝鮮で過ごした高校卒業の頃まで、かの地で唯一禁止されていなかった外国文学が、この短編集だったのです。8世紀頃から口承で伝わってきたとされるアラビアンナイトに着想を得て、私は「ノースコリアンナイト」を構想しました。
北朝鮮の実像、私の生活、家族の物語、師匠との思い出—これらの北朝鮮にまつわる話を、世界中の人々が長く語り継ぎ、二度とこのような社会が生まれないようにしたいのです。しかし、歴史は繰り返すもの。もし再び北朝鮮のような社会が出現しても、苦しむ人々が私の経験を教訓として、少しでも楽に苦難を乗り越えられることを願っています。
私が脱北後、日本に定着した理由
現在、私は日本で暮らす脱北者です。小さな北朝鮮伝統料理店「本宮クッス」を営みながら、北朝鮮の人権改善活動に携わっています。店では祖母から引き継いだ料理を中心に、北朝鮮東部の郷土料理を提供しています。感謝の気持ちを込めて経営するこの店は、順調に運営されています。
かつては法政大学で法律を学び、修士・博士課程進学も考えましたが、全てを諦めて選んだのが北朝鮮人権改善活動です。特に、約10万人の在日朝鮮人北送(帰国)問題の解決に力を注いでいます。私が代表を務めるNGO「KOA(モドゥモイジャ)」は、国内外で認知された団体となっています。主な活動は三つあります。一つ目は東京裁判(北送事業損害賠償請求裁判)、二つ目は韓国政府による在日朝鮮人北送(帰国)被害の認定、そして三つ目は新潟北朝鮮人権メモリアルパークの造成です。少しずつですが成果を上げ、国内外のメディアにも取り上げられています。
10年以上の活動を通じて、多くの素晴らしい方々と出会い、共に成果を積み重ねてきました。これは決して形だけの言葉ではありません。脱北者が直面する血縁、学縁、地縁の欠如以上に辛かったのは、一部の北朝鮮人権活動団体からの誹謗中傷でした。根拠のない噂を流布され、今でも活動を妨害されています。
権力も財産もない私たちを、変わらず支持してくださる方々に、心から感謝しています。一方で、大きな権威と財力を持つ団体が私たちを中傷し、多くの人々がそれを信じてしまう現状に、北朝鮮人権改善活動の本質を考えさせられます。
私たちの活動を妨害する人々に対しては、皮肉を込めて金正恩に表彰を推薦したい。そんなことすら思っています。