
チャン・チョルウン(統一研究院)
北朝鮮は2025年の新年早々、相次いで弾道ミサイルを発射し、韓半島の軍事的緊張の水位を引き上げた。北朝鮮は2025年1月6日、「新型極超音速中·長距離弾道ミサイルの試験発射」に踏み切ったのに続き、同月14日には短距離弾道ミサイルを数発発射した。ところが、北朝鮮は2025年1月6日、極超音速弾道ミサイルの試験発射のニュースを「労働新聞」で報道し、対内外に確認した反面、15日に断行した数発の短距離弾道ミサイルの試験発射のニュースはいかなるメディアを通じても報道しなかった。このことから見て、北朝鮮が2025年1月6日に断行した極超音速弾道ミサイルの試験発射をさらに重要視しているという推論が可能だ。このような背景のもと、本稿では、北朝鮮の極超音速弾道ミサイルの開発について簡単に考察する。
北朝鮮が2025年に入って初めて発射したミサイルは、前述したように「新型極超音速中·長距離弾道ミサイル」である。北朝鮮の「労働新聞」は2025年1月7日、「金正恩が画像で参観する中で北朝鮮のミサイル総局が1月6日に新型極超音速中長距離弾道ミサイル試験発射を成功的に進めた」と報道した。さらに、北朝鮮は「新しい戦略兵器体系試験が国防力発展計画事業の一環」として行われたとし、新型極超音速ミサイルの「発動機(エンジン)」と「胴体」製作には「新しい炭素繊維複合材料」が使われたと説明した。また、北朝鮮は「平壌市郊外地域にある発射場で新型極超音速中長距離弾道ミサイルを東北方向に発射し、極超音速弾頭は音速の12倍に達する速度で1次頂点高度99.8km、2次頂点高度42.5kmを記録して飛行し、1,500km離れた公海上目標仮想水域に弾着した」と主張した。

北朝鮮の金正恩(キム·ジョンウン)国務委員長が核物質生産基地と核兵器研究所を現地指導したと、朝鮮中央通信が29日報道した
/聯合ニュース
このような北朝鮮の主張は、韓国の合同参謀本部が把握した内容と比較すると、飛行距離で違いを示している。合同参謀は2025年1月6日、北朝鮮が平壌一帯から東海上に発射した弾道ミサイルが1100キロ余りを飛行したと明らかにした。しかし、北朝鮮の極超音速弾道ミサイルが一定区間では低い高度で飛行するため、韓国軍が運用する情報資産の探知可能範囲から外れ、飛行軌跡を正確に把握できなかった可能性がある。飛行距離のほかには、韓国軍の評価と北朝鮮の発表で異なる点を見つけることは難しい。
北朝鮮の説明のように、北朝鮮は2021年1月に開催した第8回労働党大会で金正恩が指示した国防力発展5カ年計画で核心的に見なす「5大課業」の一つとして、極超音速弾頭の開発を推進しているものとみられる。これを受け、北朝鮮は「火星-8型」という名称の極超音速弾道ミサイルを2021年9月28日に初めて試験発射した。これを2022年1月11日にも極超音速弾道ミサイル試験発射を断行したが、2021年と2022年に試験発射した極超音速弾道ミサイルは全て液体燃料中距離弾道ミサイルの上段に極超音速弾頭が搭載された姿だった。
しかし、北朝鮮は2024年1月14日、液体燃料弾道ミサイルより相対的に生存性などで優れていると評価される固体燃料弾道ミサイルの上段に極超音速弾頭を搭載して初めて試験発射した。これから約3カ月後の2024年4月2日、北朝鮮は「新たに開発した極超音速滑空飛行戦闘部(弾頭)を装着した新型の中長距離固体弾道ミサイル『火星砲-16ナ』型」を初めて試験発射した。北朝鮮は2024年4月3日、火星砲-16ナ型が「1次頂点高度101.1km、2次頂点高度72.3kmに達して飛行し、1,000km離れた東海上水域に正確に弾着」したと明らかにした。
「労働新聞」が報道した写真を見ると、北朝鮮が2025年1月6日に発射した極超音速弾道ミサイルの外形と2024年4月2日に発射した極超音速弾道ミサイル(火星砲-16ナ型)の外形において大きな違いを発見することは難しい。ただ、北朝鮮が2025年1月6日に発射した極超音速弾道ミサイルのエンジンと胴体に「新しい炭素繊維複合材料」を使用したと主張したという点が目につく。北朝鮮は2000年代初めから国家科学技術計画の一環として、一般的な金属材料より軽くて耐久性や耐熱性などに優れた炭素繊維関連研究を推進し始めたという。特に、北朝鮮は2017年、金正恩の化学材料研究所現地指導のニュースを伝え、弾頭の前部とミサイルエンジンから火炎が放射されるノズルスロート(Nozzle Throat)製作に炭素-炭素(C/C、Carbon/Carbon)複合素材を使用しようとしているという事実を示唆した経緯がある。このような側面から、北朝鮮が新しい炭素繊維複合材料の開発で一定の成果を極超音速弾道ミサイルの開発に活用した可能性も排除できない。すなわち、北朝鮮が炭素繊維複合材料を使用して製作した後、2025年1月6日に発射したミサイルが2024年4月2日に発射したミサイルより相対的に軽くなったため、もう少し速く、より遠く飛行した可能性があるということだ。
一方で、金正恩は2025年1月6日、極超音速弾道ミサイルの試験発射を参観した後、「このような兵器体系を保有している国は世界的に数少ないだろう」とし、新型極超音速ミサイルの開発が「攻撃的な構想と行動ではなく、独自防衛のための構想と努力」だと主張した。さらに、金正恩は、北朝鮮の新型極超音速弾道ミサイルが「いかなる密な防御障壁も効果的に突破し、相手に甚大な軍事的打撃を与えることができる」とし、「極超音速ミサイル体系は、国家(北朝鮮)の安全に影響を与えかねない太平洋地域にある任意の敵を信頼できるように牽制することになるだろう」と主張した。
米国、ロシア、中国などのような、いわゆる「ミサイル先進国」と呼ばれる国家が先を争って開発すると知られている極超音速弾道ミサイルの構成の中で、極超音速弾頭は一般的な弾道ミサイルに搭載された弾頭と明確に区分される特徴を持つといわれている。まず、極超音速弾頭は低高度の大気圏でマッハ5(音速の5倍)以上の速度で速く飛行する。それだけでなく、飛行中にいわゆる「プルアップ(pull-up)」起動などのように変則的に動く。このため、防衛側で飛行中のミサイルの軌道を予測することが難しく、防衛側で探知および迎撃などの対応に大きな困難を来たしているという。
北朝鮮もこのような点を考慮して、極超音速弾頭を装着した弾道ミサイルを開発するものと思われる。すなわち、北朝鮮は極超音速弾道ミサイルを開発することで、韓国型ミサイル防御(KAMD)システムを構築して多層的に北朝鮮のミサイルを迎撃しようとする韓国と、世界最強の軍事力を誇り多様な高度で重層的なミサイル防御(MD)システムを運用する米国などの防御網を突破しようとするのだ。しかし、北朝鮮はまだ極超音速弾道ミサイルの「試験発射」水準を越えられずにいる。これは、北朝鮮の極超音速弾道ミサイルの開発がまだ完了していないという事実を意味する。北朝鮮が極超音速弾道ミサイルの開発を終えた後、大量生産を越えて実戦配備するまでには、断定することは難しいと言えども、もう少し時間が必要とみられる。