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分析と提言北朝鮮の核潜水艦の脅威と韓国の核潜水艦開発方向 チョン・ソンジャン(世宗研究所副所長職務代行) 北朝鮮の戦略核潜水艦開発の急速な進展 北朝鮮は2021年1月、労働党第8回大会で戦略核潜水艦(SSBN)開発の意志を明らかにし、2025年3月にはSSBN船体の建造場面を公開した。核潜水艦(核潜)開発は、驚くほど早い展開を見せている。2021年1月に金正恩は「新しい原子力潜水艦設計研究が終わり、最終審査段階にある」と明らかにした。そして「核長距離打撃能力を向上させる上で重要な意義を持つ核潜水艦と水中発射核戦略兵器を保有することに対する課題」を国防力発展「5大重点目標」の一つとして提示した。金正恩は2023年12月に再び党中央委員会全員会議で「第2次艦船工業革命を起こし、海軍の水中および水上戦力を向上させ、国防力発展5大重点目標遂行によって不十分な課題を早期に執行することを中心課題として提示」することで、原子力潜水艦開発に拍車をかけるという意志を示した。 この時まで、北朝鮮の外部世界では、北朝鮮の核潜水艦開発が難航していると推測していた。ところが、北朝鮮は2025年3月、労働党機関紙「労働新聞」を通じて「核動力戦略誘導弾潜水艦」(戦略核潜水艦)の建造場面を公開することで、近い将来に水中に基づいた核兵器第2撃能力(Second-Strike Capability)を保有することになると予想される。 北朝鮮にとって、SSBN開発は非常に高難度の課題であるが、ロシア・ウクライナ戦争への派兵の見返りに北朝鮮がロシアから小型原子炉技術を提供受けた場合、SSBN保有は時間の問題となるであろう。一部の専門家はロシアが核潜水艦関連の技術までは北朝鮮に提供しないと主張している。しかし、ロシアは1990年代に韓国に関連技術を提供したことがあり、インドに核潜水艦を貸与して核潜水艦開発を支援した経緯がある。 北朝鮮が2025年3月に公開した戦略原子力潜水艦の建造写真を見れば、人対比による船体の大きさ、支え木の数量などを考慮すると、5,000~10,000トン級の規模と推定される。この程度の排水量を持つ潜水艦を安定的に運用するためには、推進動力が核燃料を基盤としなければならない。戦略核潜水艦は、隠密的な長期作戦が可能なので、北朝鮮は米国の戦略核潜水艦であるオハイオ級潜水艦に匹敵する最小限の機能を備え、相互確証破壊(MAD)能力を備えようという意図を持っているものと判断される。北朝鮮の船舶製造能力は韓国に比べて大きく遅れているが、北朝鮮は潜水艦保有数においては世界1位を占めるほど多くの潜水艦建造経験がある。そして、金正恩の核潜水艦開発の意志が確固たるものであり、国家財政を全面的に投入しているため、近い将来、戦略潜水艦を保有する可能性が高い。北朝鮮が戦略核潜水艦を完成すれば、これは韓米同盟と韓日の核安全保障に相当な影響を及ぼす「ゲームチェンジャー」となりうる。 北朝鮮が米本土を攻撃できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の力量を保有したのに続き、米本土の前まで航行できる戦略原子力潜水艦を保有するようになれば、韓国に対する北朝鮮の核EMP弾、または核兵器攻撃の際、米国の対応は制限されるしかない。戦略核潜水艦は、北朝鮮が米国と韓国を相手に、より高い信頼性を持って核の脅威をもたらす手段を提供することになり、従来の地上基盤体系よりも、核による強圧的手段としての効用性を高めることになる。 韓国の原子力潜水艦保有の必要性 韓国が原子力潜水艦を保有することになれば、戦術核兵器を搭載した北朝鮮のディーゼルの中型潜水艦や未来の戦略核潜水艦をより効果的に監視し、牽制できるようになるだろう。核潜水艦は隠密性と攻撃および水中作戦能力で在来式潜水艦にはない長所を兼ね備えている。核潜水艦の最大速度は時速46kmであり、在来式潜水艦より最大3倍以上速い。在来式潜水艦より規模が大きく、さらに多くの兵器を搭載できるというのも核潜水艦の長所である。このように核潜水艦がディーゼル潜水艦よりはるかに多くの長所を持っているため、米国は1990年代に従来のディーゼル潜水艦をすべて廃棄して核潜水艦と交替した。 韓国は現在、独自に潜水艦を建造し、輸出まで推進するほど発展した潜水艦の開発力量を保有している。韓国は3000トン級の張保皐(チャン·ボゴ)-III潜水艦の開発により、世界で8番目に中型潜水艦を独自設計·建造した国となった。張保皐-III潜水艦はリチウムイオンバッテリー、空気不要推進システム(AIP)、垂直発射管など世界最高水準の技術が集約されたディーゼル潜水艦で、国産化率80%を誇っている。この潜水艦は武装、潜航持続性、自動化性能などで高い評価を受けている。 原子力潜水艦の建造における主な争点の一つは、獲得費用である。一部の専門家は、原子力潜水艦の建造に天文学的な費用がかかるかのように主張する。しかし、同分野の権威ある専門家であるムン·グンシク漢陽大学兼任教授によると、韓国型原子力潜水艦の1隻当たりの建造費としては約2兆5千億ウォンがかかるものと推算される。国産3000トン級ディーゼル潜水艦の1隻当たりの価格が約1兆ウォンであるため、原子力潜水艦がディーゼル潜水艦より建造費用が相対的に多くかかるのは事実だが、原子力潜水艦の効用性と戦略的価値を考慮すると、原子力潜水艦の建造費用が韓国政府の国防財政で手に負えない水準ではない。韓国は米国より人件費が安く、より短い期間に潜水艦を建造できるインフラを持っているため、韓国が原子力潜水艦を建造するには米国よりはるかに少ない費用がかかるだろう。 韓・米・日および国際協力の方向 もし、北朝鮮が近い将来において米本土まで密かに航行できる核潜水艦を進水させることができるようになれば、北朝鮮は確実な「第2格」能力を確保することとなり、韓米日の安全保障にとってより深刻な脅威となるであろう。北朝鮮のこのような潜水艦脅威に対応するため、韓国と日本の原子力潜水艦の開発が急がれる。韓米日が共同で核潜水艦を開発し運用するという協力事業を推進する場合、これは米国の国益と東アジア戦略にも全面的に符合するであろう。韓国と日本が核潜水艦を保有することになれば、台湾有事の際に米国はこれらの国の核潜水艦支援を受けることができるのだ。 韓国政府は核潜水艦の共同開発及び運用に向けた韓国・米・日・英国・豪州のコンソーシアムの構築も考慮する必要がある。しかし、もしトランプ第二期の行政部が核潜水艦建造関連において韓国との協力を拒否すれば、韓国政府はブラジルのようにフランスとの協力を模索することが望ましい。韓国はフランスの核潜水艦のように低濃縮ウランを利用した核潜水艦の建造を推進している。したがって、韓国は米国よりはフランスの核潜水艦運用経験からより多くのことを学ぶことができる。
25.07.25 -
北朝鮮経済の動向分析平壌で拡大する「影の宿泊経済」:北朝鮮における個人宿泊業の実態 郭仁玉(カク・インオク)淑明女子大学ICT融合学部 教授 1990年代の「苦難の行軍」以降、北朝鮮では国家による中央配給制度が機能不全に陥り、住民は自発的な経済活動を通じて生計を維持するようになった。この動きが後の「市場化」につながり、物資取引を超えて宿泊、運輸、飲食といったサービス分野にも拡大している。特に平壌駅や平城駅を中心とした個人宿泊業の台頭は、北朝鮮の影の経済構造を象徴する存在となっている。 1. 平壌駅周辺の事例平壌駅は地方からの商人や公務員が行き交う交通要衝であり、公式なホテルが高額・厳格であることから、住民が自宅を改装した「民宿」に人気が集まっている。宿泊料金は現金だけでなく、米、トウモロコシ、乾燥イカといった現物支払いが多く、メ뚜기市場と呼ばれる夜間の路上取引で宿泊仲介も行われている。これは完全に非合法ではあるが、賄賂によって治安担当者と「共存」している事例も多い。 2. 平城駅周辺の事例地方卸売の拠点である平城市では、早朝市場に向けた商人の流入が激しく、宿泊ニーズが急増。これに応じて駅周辺の住宅地(玉田洞、駅前洞、恩徳洞など)では個人宿泊業が盛んに営まれている。ここでも、民家の一部を提供する形で宿泊サービスが行われており、荷物の保管や食事の提供など、信頼関係に基づく柔軟な対応が特徴である。 3. 市場経済との相互依存個人宿泊業は、北朝鮮の「市場経済」と密接に結びついており、地方―都市間を往復する商人たちにとって不可欠なインフラとなっている。宿泊料は都市部で1~3万円(1泊)、地方では数千ウォン程度とされ、柔軟な料金体系と家族的サービスで常連客を囲い込む。これは単なる収入源ではなく、非公式ネットワーク構築の要でもある。 4. 売春との結びつき一部の民宿では売春が横行しており、これは経済困窮に陥った女性の「生存戦略」として黙認されている傾向がある。報告によると、平壌市では2~3万人の売春婦が存在し、料金は1泊10万ウォン前後。売春は将校や商人、学生など特定階層に集中し、性病の蔓延や青少年の巻き込みといった深刻な副作用を伴っている。 5. 政府の対応と黙認傾向政府は表向きには取締りを強化しているものの、現場レベルでは賄賂による黙認や、特定地域での事実上の容認が確認されている。公式宿泊施設が不足する中、個人宿泊は生活インフラの一部として定着しつつあり、社会経済の変化に対する「民間の適応策」とも言える。 この現象は北朝鮮の非公式経済構造、地方経済と都市との物流、住民の生計戦略、さらには性産業といった多層的な要素が絡み合う注目すべき事例である。北朝鮮研究、制裁政策、脱北者支援、ジェンダー問題など、多様な研究・政策分野における参考情報となるだろう。
25.07.25 -
時事分析三日月地帯の崩壊:シリア政変と北朝鮮への影響 朴炯道(パク・ヒョンド) 西江大学 ユーロ・メナ研究所 教授 2024年12月8日、HTS(Hay’at Tahrir al-Sham、シャーム解放機構)の首都ダマスカス制圧により、父ハーフィズ(1971〜2000年)と息子バッシャール(2000〜2024年)のアサド政権が崩壊した。 HTSの指導者アブ・ムハンマド・アル=ジュラニ(1982年生)は、臨時政府の大統領に就任し、「シャーム臨時政府(Provisional Government of the Levant)」が樹立された。これにより、アサド父子の統治、バース党による社会主義体制、世俗主義、親イラン・反米体制が崩壊した。 HTSは、もともとアル=カーイダのシリア支部であった「ヌスラ戦線(Jabhat al-Nusra)」から発展した組織である。したがって、HTSのシリア掌握は、中東地域における「穏健的イスラーム主義政権の時代」の始まりを意味し、「世俗적権위주의政権の時代」の終焉を意味する。トルコはHTSを全面支援し、エルドアン大統領とジュラニ臨時大統領は強い信頼関係を維持している。HTS政権樹立に伴い、2025年4月に大韓民国(韓国)とシャーム臨時政府との国交が樹立された。イラン市民らが15日(現地時間)、テヘランのパレスチナ広場に集まり、前日に革命防衛隊が行ったイスラエルへのミサイル攻撃を祝った/AFP通信/聯合ニュース HTS政権は「穏健イスラーム主義」を掲げているが、キリスト教徒やアラウィ派、ドルーズ派など少数宗派への弾圧は依然として続いている。2025年6月、アメリカはHTS政権に対する制裁を解除した。背景には、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、イスラエルなどの中東スンニ派諸国とイスラエルによる「イラン封じ込め」戦略がある。HTS政権は「反イラン・反ヒズボラ」を公式に宣言しており、アサド政権の崩壊はレバノンのヒズボラに対するイランの支援ルートを遮断する結果となった。 したがって、シリア政変は、イランのレバント地域への影響力を遮断する「三日月地帯の崩壊」を意味する。シリアのアサド政権は、イランがバグダッドからダマスカスを経てレバノン南部まで影響力を及ぼすための中核的存在であった。アサド政権はヒズボラへの兵站補給ルートとして機能しており、また、イランと北朝鮮の中東ネット워크の「연결축(連結軸)」としても機能していた。アサド政権の崩壊により、イランと北朝鮮の中東連結網は断絶されたのである。 シリア政変は、北朝鮮に対しても大きな打撃となった。2007年9月6日、イスラエル空軍によるアル=キバル原子炉爆撃(Operation Orchard)は、シリアと北朝鮮が核開発を共同推進していたことを示している。シリアの原子炉建設は、北朝鮮とイランが主導していた。 アサド政権は、北朝鮮の武器を安定的に購入する最上の顧客であり、また、国際社会からの非難を受けることなく北朝鮮との取引を続けてきた。したがって、アサド政権の崩壊は、北朝鮮にとって「第3세계 非同盟諸国」とのネットワークを喪失したことを意味する。 2024年以降、シリア、アルジェリア、チャド、スーダンなど、アサド政権と関係の深かったアフリカ・中東地域で親米政権が誕生しており、北朝鮮は外交的孤立を深めている。北朝鮮の「反米・反イスラエル・親이슬람강경파(イスラーム強硬派)」外交はすでに破綻している。 2024年12月以降、北朝鮮は、HTS政権樹立と韓国・シャーム臨時政府の国交樹立に強い衝撃を受けている。HTS政権は、北朝鮮が長年支援してきたパレスチナの過激派組織やバース社会주의 세력(勢力)を否定している。さらにHTS政権は、ロシア、イラン、中国、そして北朝鮮を「シャームと 우마(ウマ:イスラム共同体)を 억압(抑圧)する 세력(勢力)」として公然と批判している。 シリア政変以降、北朝鮮は中東地域での影響力を喪失し、パレスチナ問題において도、影響力を行使できる拠点が失われた。また、HTS政権が韓国との国交を選択したことは、北朝鮮にとって象徴的屈辱である。
25.07.25 -
北朝鮮インサイドキム・ミョンソン SAND研究所専任研究員 金正恩、大泣き準備…7月27日戦勝節 ロシア派兵戦死者遺骨埋葬式 北朝鮮は、ロシア戦線に派遣された人民軍戦死者の遺骨を7・27戦勝記念日に合わせて烈士陵墓の周辺に埋葬し、大規模な追悼式典と宣伝行事の準備を進めていると伝えられている。金正恩国務委員長は「祖国の息子たち」と称し、直接追悼メッセージを準備中であり、党と軍、保安機関に対し、全方位的な政治活動指示を出したとされる。金正恩委員長が号泣するなど、涙の演技を展開する可能性も指摘されている。 21日、平壌市の高官筋は「政府は今年、ロシアのクルスク戦線で英雄的に戦死した人民軍の遺体が1月から5月にかけて3回にわたり帰還したことに伴い、7月5日に党中央委員会総政治局と国家保安省の部長級以上の幹部に対し『非公開の政治活動指示事項』を下達した」と明かした。 指示事項によると、北朝鮮は遺体送還事実を「最高の革命的精神と愛国心の象徴」として包装し、帰還兵士と遺族を活用して全国的に忠誠心教育キャンペーンを展開する方針だ。戦死者たちは現在、平壌郊外の烈士陵予備地区に一時安置されており、公式の追悼式は戦勝節当日に開催される。 先月30日、北朝鮮は朝鮮中央テレビを通じて、ロシアに派遣された北朝鮮軍の活動と戦没者遺体前で金正恩委員長が涙を流す様子を放送した。北朝鮮は今回の葬儀を通じて内部の統制と体制の結束を図っている。指示文書には「当該事案を思想的に最大限に高揚させること」「一部の不定期な流れや歪曲の試みは事前に徹底的に遮断すること」が明記されていると、関係筋は伝えた。 宣伝活動は、党中央委員会宣伝扇動部と軍政指導部、国家保衛省政治部が共同主催し、総政治局、国防省、各道・市・郡軍事指導部を通じて並行して展開される。特に遺族面談と思想検査は、保衛省直属組織が単独で担当するようにした。 北朝鮮は平壌を含む主要5つの直轄市と北部国境地域を重点に、宣伝公演、烈士談話会、忠誠誓約集会を実施し、帰還兵力は「英雄的な武勲談の生き証人」として活用し、各地の宣伝講演に投入する計画だ。また、帰還兵士には戦時英雄称号と特級勲章を授与し、家族には生活優遇措置を通じて補償すると明言した。 しかし、内部統制のための警告も欠かされていません。北朝鮮は指示文で「遺族のうち不満を表明したり内部の動揺を扇動する者がいれば、当該人物は保安省の監視対象者に即時転換する」「帰還兵力は忠誠教育のツールとして全面的に活用するが、思想の緩みがあるかどうかは定期的な検査で確認する」と明記したとのことです。 情報筋はまた、「各地域単位の党委員会は、一般公開前に幹部学習、遺族整理、帰還者活用計画を3段階に分けて事前整備するよう指示を受けた」と述べた。北朝鮮は指示事項に従い、すべての文書・資料・発言を承認された範囲内でのみ使用するよう制限し、情報漏洩の場合、各組織・保安・党ラインに対し「厳重な責任追及」を警告した。実際、遺族にはまだ通知書が送付されていない状態であり、5日時点では1週間以内に第1次事業実施報告を必須で提出するよう命令されたという。 情報当局によると、北朝鮮は昨年と今年、約1万5000人の軍兵力をロシア戦線に派遣し、そのうち少なくとも600人が死亡し、数千人が負傷したものと推定されている。 情報筋は「大規模な葬儀を通じて忠誠心を高めようとする戦略だが、戦死者数の増加と帰還兵の証言が統制失敗につながった場合、北朝鮮内部の世論が逆に不安定化する可能性がある」と予測した。 「ドルで薬を購入」…薬局が医療施設ではなく外貨取引の場に変質 「薬局でドルを支払わなければ薬をくれない。薬局は一体何のドル集め為替所なのか?」 北朝鮮の薬局はもはや『公共医療施設』ではなく、徹底した外貨取引の場へと変質している。『国家所属』の看板を掲げる薬局は、実際は個人資本で運営される『個人薬局』であり、医薬品はドルのみで取引されているという。 22日、北朝鮮の事情通によると、北朝鮮の主要都市の薬局は現在、医師や看護師の資格を持つ医療界出身の資産家(ドンジュ)が、市人民委員会(日本の市役所相当)の許可を受けて運営している。表面上は国家所属の薬局という看板を掲げているが、内部の運営は完全に個人資本に依存している。 国家機関の名義を借りた彼らは、一定額を「収入金」として納付し、医薬品の購入から保管・販売・利益まで全て個人が責任を負う構造だ。そのため「外見は国家機関、実態は100%民間薬局」という言葉が生まれる所以だ。 薬局運営者は国家医薬品供給会社の名義を利用して薬を調達するが、自社在庫がない場合は他の会社との「私的流通網」を通じて調達する。北朝鮮の自社製薬工場で生産された薬もあるが、輸入原料を使用した医薬品は例外なくドルのみで販売される。平壌の事情通は「以前は内貨(北朝鮮の通貨)も一部受け取っていたが、現在は薬局が完全なドル経済に再編された」と述べ、「ドルがなければ薬もない」と語った。 これにより、外貨を調達できない一般住民は、病院の幹部や医師が横流しした薬を密かに購入したり、「薬商人」と呼ばれる非公式の販売者に依存している。しかし、これは取り締まりの対象だ。取り締まりに引っかかった場合、全量が没収されたり罰金刑を受ける可能性もあるが、生存のための薬の需要は絶えない。 医薬品不足の事態は、インスリンの供給状況で特に顕著だ。糖尿病患者に不可欠なインスリンは、北朝鮮の一般病院では事実上入手できない。各級病院にはインスリンが配分されておらず、最高位層の幹部らが利用する南山病院や奉化診療所などにのみ極少量備蓄されているという。 インスリンの価格高騰にもかかわらず、コネや個人的なつながりがない住民は、そもそも入手すら不可能だ。ある情報筋は「お金があってもインスリンを入手できないという現実が、まさに現実となった」と述べ、「そのため、糖尿病患者の中には病状が急激に悪化し、命を落とす人も相次いでいる」と伝えた。 金正恩国務委員長は最近、『地方発展20×10政策』の一環として、各地域に保健所と薬局の拡充を指示したとされる。しかし、実際は国家医薬品流通体系は崩壊してから久しく、現場では『保健インフラ』ではなく『外貨取引』だけが横行しているとの批判が出ている。ある脱北者出身の医療専門家は「現在、北朝鮮の薬局は国民の健康のための空間ではなく、ドルを収集する両替所の役割を果たしている」と指摘し、「制度の外で命を維持しようとする住民の苦痛は、当局の形式だけの政策では決して解決されない」と批判した。 各自生存社会主義…金正恩の造語「自生自決革命精神」の真実 北朝鮮は最近、従来の「自力更生」のスローガンに加え、「自生自決」という新たなスローガンを本格的に使用し始めた。他者の力に頼らず、生きる道も自ら決定せよという意味で、北朝鮮当局が地方発展政策を推進する中で、地方に対し中央依存を徹底的に断ち、自ら生きよというメッセージを投げかけたものと分析される。 自生自決という用語は、昨年から金正恩北朝鮮国務委員長が本格的に推進した「地方工業発展20×10」政策と共に登場した。地方が独自に生存し経済を運営すべきという論理を支える核心用語であり、自力更生よりもさらに強い「孤立自立型生存論」と解釈されている。 北朝鮮労働党機関紙の労働新聞は22日、「自生自決の革命精神と不屈の進撃力」を強調し、「党員の生活はすなわち闘争である」と主張した。同紙は「国家発展の上昇潮流を確固たるものにするための基盤を、自生自決の精神で拡大しなければならない」と明言し、今後このスローガンが全国的な政策推進の基調として拡大されることを示唆した。 従来の自力更生が「私たちの力で生きてみよう」という集団的な経済自立のスローガンだったのに対し、自生自決は各地方単位で生存戦略と実行まで自ら担うよう求める意味と解釈される。 自生自決は「自分が生きていく道を他人に頼らず、自ら決定し開拓する精神」と定義された。専門家たちは「これは単なるスローガンではなく、中央レベルの支援縮小を正当化する思想的な包装だ」と分析する。 金正恩国務委員長も昨年12月の全員会議直後、新浦養殖場竣工式で「自力更生、自生自決を空虚な言葉で唱えるのではなく、その秘訣が自分自身にあることを明確に理解し実践することが重要だ」と強調した。現場の実務者に対し、地方建設の責任を完全に問う方針だと評価されている。 北朝鮮は6月に開催された労働党第8期12回全員会議でも、「自生自決の精神で、我が式の社会主義の全面的な隆盛のための実践的措置を討議決定した」と述べ、当該スローガンを党の公式路線として確立した。地方への責任転嫁がさらに本格化する可能性が高まったとの観測だ。 一部では、金正恩政権が国際制裁の長期化と深刻な資源枯渇の中で、平壌中心の政策に対する地方の不満を鎮めるため地方発展政策を推進したが、結局、地方単位の分権的自立を強調せざるを得ない限界状況に追い込まれたと見る。北朝鮮の構造的孤立の中で、『我が式社会主義』は徐々に『各自生存社会主義』に変質しているとの指摘も出ている。 国策研究機関の関係者は「自生自決は、中央がもはや支援できないため、地方が各自で生き延びろという指針に等しい」と述べ、「中央の支援なしに10年長期プロジェクトである地方発展政策を推進することは無理であり、時間が経つにつれ政策推進の勢いが衰える可能性がある」と指摘した。
25.07.25 -
コラム犠牲に対する記憶と補償 vs 忠誠心の宣伝用 : 韓国と北朝鮮の報勲政策の違いユン・スンビ、ソウル基督大学教授(ヒューマン社会サービス学部)朝鮮戦争勃発75周年を控えた今、国家の「記憶方式」は戦場にいた者らの生と死をどのように記憶しているのかという質問に戻る。南北の報勲政策は、まさにこの質問に対する国家的な回答であり、体制の素顔を示すバロメーターでもある。韓国の報勲は、自由と独立、民主化のために身を捧げた人々に国家が尊敬と責任を果たす装置である。法律で体系化された支援は個人の犠牲を記憶し、国民全体が愛国の価値を共有できるようにする。一方、北朝鮮では、報勲を「革命継承」の道具として使用する。植民地時代の抗日闘争、朝鮮戦争、そして金日成一家に忠誠した者たちを「革命烈士」と呼び、体制の正当性を強化することに重点をおいている。韓国が報勲を民主共和国の責務とするなら、北朝鮮は「革命国家」の忠誠度を計るものである。韓国は「国家有功者礼遇等に関する法律」(1984年制定)によって報勲対象と支援項目を詳細に規定している。計87の条項と附則を通じて補償、教育、医療、就職、住居、貸付、葬儀など包括的支援体系を備えてきた。支援対象は独立有功者、朝鮮戦争による戦没·戦傷した軍警、民主化運動犠牲者、殉職公務員、除隊軍人など国家発展と安保に寄与したすべての人々だ。礼遇は犠牲の大きさと遺族の生活程度を考慮して適用され、「国家が最後まで責任を負う」という原則の下で行われる。一方、北朝鮮は別途に法律はなく各種の「規定」と「決定書」によって報勲対象を管理する。朝鮮人民軍戦死者遺族支援、除隊軍人の職業保障、子供教育の保障などが主要な枠組みだ。北朝鮮が規定を基に保障する内容は、住宅提供、食糧配給、職業紹介、学用品の支援などである。しかし、このような「保障」は、体制忠誠度を基準にし、階層分類によって支援水準に差が生じる。報勲が権利ではなく、「恩恵」の性格を帯びている。韓国における報勲の核心は、犠牲に対する「公共の記憶」と補償だ。国立墓地に埋葬、顕忠日追悼行事、報勲病院などは市民の日常の中に報勲の意味を刻印させる。教育と広報も国民統合の装置として機能する。一方、北朝鮮は「宣揚事業」に力を入れている。抗日闘士、戦争英雄に授与される「共和国英雄」、「努力英雄」の称号と記念勲章は忠誠の象徴であり、後代に対する教育手段だ。遺児は別の機関で教育を受け「革命家の子孫」という象徴資本を持つことになる。報勲はすなわち「革命遺産」の継承である。韓国は報勲予算を毎年拡大し、民間後援まで連携する方向に発展している。2024年、報勲部の予算は約6兆ウォンに達し、報勲家族福祉支援を強化している。北朝鮮は、体系的な予算公開をしていない。ただし「革命遺産」として包装された報勲政策は経済難の中で粗末に運用されているのが実情である。特に金正恩時代に入って国家財政が核開発、軍備増強に集中し、実際的報勲は「宣伝用」に近いという評価もある。報勲は単純な福祉政策でなく、国家がどのように自国の過去を記憶し、未来を設計するのかを示してくれる社会契約の一環だ。韓国の報勲制度が法と制度を通じた体系的運営に根を置くなら、北朝鮮の報勲は「忠誠の政治」と「宣伝の象徴」にとどまっている。つまり報勲はその社会が人間の尊厳をどのように扱うか、犠牲をどのように称えるか、そして次の世代に何を継承させるのかを示す鏡でもある。報勲の違いは、まさに体制の違いであり、報勲に対する認識の差異は統一以後、韓国社会が治癒し統合しなければならない課題となるだろう。
25.06.27 -
北朝鮮動向分析北朝鮮-ロシアの軍事協力による北朝鮮軍需産業の現代化(社)SAND研究所研究委員イ・スンヒョン(行政学博士)5月、北朝鮮は軍事力の誇示と軍需産業の現代化に集中しながらも、ロシアとの同盟強化を契機に外交戦略の転換を試みる姿が明確に現れたと言える。2025年5月の1ヵ月間、北朝鮮は金正恩委員長の活発な軍事中心の歩みとともに、ロシアを軸とした戦略的外交路線をより明確に示した。金正恩委員長は計8回の公開活動を行い、活動回数は4月と同じだったが、その内容においては軍事分野にさらに集中する様相があった。 まず5月4日に金正恩は重要なタンク工場を現地指導し「第2次装甲武力革命」を公式化し、機動性と電子戦能力などが補強された新型装甲車体系への転換計画を発表した。続いて7日には軍需企業所を訪れ、砲弾生産実績を点検し、技術革命と増産革命の並行推進を強く注文した。これは北朝鮮が最近強調している「現代戦へ備える」という基調と緊密につながっているものとみられる。その後、9日には東部戦線で600mm放射砲と戦術弾道ミサイル「火星-11A」の合同打撃訓練を指導した。特に今回の訓練は「核の引き金」と命名された国家核兵器統制体系を基盤としたものであり、これは北朝鮮が指揮統制システムの実戦運用能力を誇示しようとする意図と解説される。訓練は指揮統制の安定性と核反撃手続きの熟達を核心目的として進行され、兵種別戦術総合訓練(13日)と空軍師団訓練指導(15日)へと進み、軍全般の戦闘力強化意志を繰り返し示したと見ることができる。 このような中、5月21日には、清津造船所で金正恩の主管によって新型駆逐艦の進水式があったが、この席で進水の過程中に発生した事故によって艦尾が破損されて転倒した出来事が起きた。金正恩はこれを「政治的犯罪行為」と規定して強力な問責を指示し、6月の党中央委員会前まで、原状復旧を命令するなど、体制、リスクマネジメントについた敏感な反応を見せた。結局、この事故は、北朝鮮軍需産業の構造的技術の限界を如実にあらわした事例として見ることができる。一方、今月最も注目すべき外交の動きは、金正恩が5月9日、ロシアの戦勝節を迎え、北朝鮮駐在ロシア大使館を直接訪問して演説を行ったことだった。これは金正恩政権以降初めての外国大使館訪問の事例であり、北朝鮮・ロシア関係を「血盟」であり「不可逆的同盟」と規定して、ウクライナ戦争に対するロシアの立場を支持するとともにロシアの領土が攻撃される場合、北朝鮮も武力対応の可能性を示唆したこと。このような発言は、北朝鮮・ロシアの関係が単なる外交友好を超えて実質的軍事協力段階に突入していることを示す強い信号と解釈することができる。 国内的には軍事訓練及び産業点検のほかにも「5.21建築祝典」の開催(13日)、検徳地域や和盛地区の住宅建設の進捗状況の発表など、体制結束と住民統制用活動も着実に進み、さらに北朝鮮-ベラルーシ経済共同委員会第3次会議(7~8日)も開催し,ユーラシア地域の国々との実利的な協力拡大を図る動きも見られた。 結論的に5月、北朝鮮は軍事力強化と外交地形再編を並行する二重戦略を取っていると見ることができる。内部的には核指揮統制体系と兵種別戦闘能力向上を通じて体制結束を強化し、外部的にはロシアを中心とした戦略的連帯を通じて対米·対西側牽制を強化している。特にロシア大使館訪問と戦術核関連訓練公開は、北朝鮮が軍事的実体を中心として今後の交渉力を極大化しようという計算された動きと解釈できる。要約すると、北朝鮮は現在の体制安定と対外交渉力の強化を同時に追求し「強い者が強くなる」という構図をより鮮明にする戦略的方向に進んでいると見られる。
25.06.27 -
分析と提言最近の中国とロシアの対北朝鮮制裁の形骸化気流と北朝鮮の制裁回避動向分析イ・サンミン(慶南大学/山東大学将兵教授)1. 制裁体制の危機と代案ガバナンスの出現 最近、中国とロシアは対北朝鮮制裁の緩和の必要性を持続的に主張している。2024年以降、国際社会は北朝鮮の高度化された制裁回避戦略に直面し、既存の国連中心制裁体制の構造的限界を経験している。2024年以降中国とロシアは、国連安保理など国際舞台で反復的に対北朝鮮制裁の緩和を主張し、火事の家に油をそそぐまでしている ロシアは2024年3月、国連安保理会議で対北朝鮮制裁専門家パネルの活動延長を阻止し、制裁システム自体に対する全面再検討を要求し、ロシアの拒否権行使によって国連安保理傘下の制裁専門家パネルの活動が中断され、公式的な対北朝鮮制裁監視体系が崩れた。 中国は北朝鮮の経済・人道主義的危機を解消するため、対北朝鮮制裁の一部を解除しなければならないという立場を表明しており、北朝鮮との戦略的協力を考慮して国連制裁がこれ以上実効的でないという点を強調している。特に2025年5月8日、ロシア戦勝節80周年記念式で中ロ首脳は対北朝鮮制裁の中断と韓半島外交の解決を促す共同声明を発表した。米国主導の対北朝鮮制裁フレームに対する反対の立場を明確にした。中ロ首脳の外交的立場表明は単なる修辞的次元を越え、北朝鮮との戦略的連帯を強化しようとする地政学的戦略と分析できる。このような発言は、制裁体制の持続可能性と国際合意の間の北朝鮮制裁の形骸化の可能性を示す現実的な断面である これに対する反作用として米国、韓国、日本を含む11カ国は、官民協力基盤の「多国籍制裁モニタリングチーム(MSMT)」を創設し、独立的で自律的な監視活動を続けている。これは対北朝鮮制裁の制度的正当性を補完して、多国間主義の新たな形を模索する試みと評価されている2. 北朝鮮の制裁回避戦略の多角化と精巧化 北朝鮮は既存の単純な密輸や第三国を通じた迂回戦略を越え、サイバー空間、海上ネットワーク、不法労働力活用など多様な領域で制裁回避を高度化している。 (1) サイバーハッキングと偽装IT労働者 北朝鮮は仮想資産の奪取や偽装されたIT労働者派遣を通じて高収益の外貨を獲得している。彼らはディープフェイク技術と偽造された身分証を使用して西側企業に遠隔勤務者として入り込み、これらが稼いだ収益は政権によって兵器開発資金に転用される。2024年一年間の北朝鮮ハッカーたちが奪取した仮想資産は約13億4千万ドルに達し、これは全世界の仮想資産のハッキング被害の50%以上を占めたものと分析されている (2) ロシアとの軍需協力及び精製油の輸入 2024年以降、北朝鮮とロシア間の軍事協力が大幅に強化されており、北朝鮮はロシアに軍事装備や弾薬を提供した見返りに約5億4千万ドルの外貨を獲得した。特にロシアは、国連制裁の上限ラインである年間50万バレルを超過し、約100万バレル以上の精製油を北朝鮮に供給したことが、衛星資料を通じて確認された。これは両国間の戦略的癒着の象徴的事例であり、制裁システムの執行力の不在を如実に表した (3) 海上密輸と「影の船団」運用北朝鮮はAIS(自動識別装置)を遮断したり船舶身元を偽造する方式で海上密輸を持続している。いわゆる「影の船団」は第三国の国籍を盗用して、公海上で船舶同士の積み替えを通じ石油、兵器、贅沢品などを運搬している。2024年4月、韓国政府は北朝鮮船舶である「ドイ号」と「徳成号」の不法積み替え場面を衛星写真と共に公開し、国際社会の注目を集めた (4) 海外労働者派遣の持続と人権問題 国連安保理決議2397号は2019年末までに北朝鮮労働者の全面撤収を明示しているにもかかわらず、北朝鮮は中国とロシアの一部地域において依然として労働者を派遣している。特に2024年1月、中国吉林省和竜市市では賃金未払いに抗議した北朝鮮労働者がデモを行い、この過程で工場管理者1人が死亡する事件が発生し国際的波紋を呼び起こした3. 2024–2025年 北朝鮮の対中国密輸活動 : 事例中心の分析 (1) 仮想資産の奪取 北朝鮮のハッカーはブロックチェーン基盤資産に対する攻撃を強化しており、2024年には13億4千万ドルに達する暗号通貨を奪取したと推定される。この資金は核兵器と弾道ミサイル開発に転用されたものと見られ、サイバー空間が経済制裁回避の核心的な戦場になっている (2) 偽造タバコ密輸 北朝鮮は偽タバコを大量に生産し密輸出することで、外貨を確保している。2024年2月、オーストラリアで約7億ドル規模の偽タバコを密輸した容疑で、中国籍人物が米国の要請で逮捕されており、この資金も北朝鮮の軍事開発資金に活用されたものと推定される (3) 北朝鮮の石炭密売 2025年2月、中国東南部海域において、北朝鮮船舶が不法石炭を輸送していた中国の船舶と衝突して沈没する事件が発生し、15~20人の北朝鮮船員が死亡した。AISを消して航海していたという点と当局の消極的な対応は密貿易構造の固着化を見せている (4) 中古車密輸 北朝鮮と中国貿易商らは日本産の中古車を北朝鮮から中国に逆輸出する密輸ルートを開拓しており、AIS操作と船の偽装などのスプーフィング(spoofing)技術が積極的に使用されている。これは、北朝鮮密貿易ネットワークの技術的精巧化を反映する事例でもある (5) 北朝鮮労働者派遣 国連制裁にもかかわらず、北朝鮮は依然として中国内の一部地域に労働者を派遣しており、これらは深刻な人権侵害と劣悪な勤務環境に置かれている。中国政府はこれについて事実上黙認し、北朝鮮の制裁回避に実質的な貢献をする構造的要因として作用している4. 制裁ガバナンスの再編と対応課題 中国とロシアは、国連安保理常任理事国としての責任ある立場にもかかわらず、北朝鮮制裁において非協力的であり、実質的な取り締まりに消極的な態度を見せている。これは国際制裁システムの信頼性と実効性を悪化させ、北朝鮮の回避戦略が精巧化になればなるほど、既存の制裁メカニズムは無力化され、その実効性は失われる。 したがって、官民協力や地域基盤の多国間主義的な対応が必要であり、今後の対北朝鮮制裁システムは監視体系、情報共有、制裁の正当性確保を中心に精密化されなければならない。究極的に制裁の目的は、北朝鮮住民の苦痛ではなく、核およびミサイル開発の実質的阻止を目標にしなければならず、政治的一貫性と制裁ガバナンスの統合性が中長期的に最も核心な的課題になるだろう。
25.06.27 -
北朝鮮経済の動向分析苦難の行軍後、30年の評価: 北朝鮮経済の10の特徴とその意味郭仁玉(クワック・インオク)教授の「平壤市場経済」リポートⅠ. 北朝鮮経済30年の変化という旅程1990年代初め、韓半島の北方の地に巨大な亀裂が入った。ソ連と東欧社会主義圏の崩壊、相次いだ自然災害、そして「苦難の行軍」と呼ばれた大飢饉は、北朝鮮社会の根幹を根こそぎ揺るがすものであった。国家がすべてを責任を負った配給制と中央集権的計画経済は一瞬にして崩壊し、住民らは生存のために、自ら市場を開き、チャンマダンを作り、新しい経済秩序を模索し始めた。以後30年、北朝鮮経済は公式と非公式、合法と非合法、統制と自律が混在する独特な二重構造に進化した。市場化と私有化の波は住民の生活を変え、新興資本家と市場商人たちは新しい経済主体に浮上した。しかし、その裏には依然として強固な中央党組織部の権力集中、移動の自由の制限、賄賂や負担金の日常化、そして虚偽の統計との命令中心という非効率性が根強く残っている。この論考は、過去30年間、北朝鮮経済が直面してきた変化の旅程を10個の主な特徴として整理し、その変化が北朝鮮社会と住民の日常にどんな意味を残したか、そして今後の展望はどうなるかという点を明らかにするものである。今、私たちは「苦難の行軍」以後30年の時間を振り返り、北朝鮮経済が迎えることになった機会と限界、希望と不安の交差する点において、どのような選択をするのかという問いを投げかけなければならない時である。Ⅱ. 北朝鮮経済30年の評価: 北朝鮮経済の10の特徴1. 市場化、制度化、私有化の拡大1990年代の「苦難の行軍」後、国家の配給制と計画経済が崩壊したことによって、北朝鮮全域に公式・非公式市場(ヤミ市場/チャンマダン、夜店など)が急速に拡散された。住民たちは生存のために自発的に市場に参加し、食糧・工業製品・輸入材など、様々な商品が取引され、市場の機能が拡大された。この過程で、一部の生産手段と資本が個人や家族単位により私有化される現象が目立っており、新興資本家(金主)らが国営工場・企業所などに投資し、生産手段の部分的な私有化も進められている。2002年の7.1経済管理改善措置と2014年の社会主義企業責任管理制などは、経営分権、市場価格の反映、個人耕作地の拡大、総合市場の導入など、制度的変化を通じて市場化の流れを公式的に後押しした。しかし依然として計画経済と市場が混在し、合法と非合法領域の境界が曖昧な二重経済体制が維持されている。全体的に北朝鮮の市場化と私有化は住民経済生活の核心となり、国家もこれを部分的に認め制度化する方向に変化している。2. 工場・企業所稼働率の低迷北朝鮮全体の工場・企業所の稼働率は金正恩政権後、一部改善があったが、依然として10%未満で非常に低い水準にとどまっている。軽工業、特権機関、外部投資企業など、一部分野の稼働率は相対的に高いが、重工業・鉱業など大多数の企業所は深刻な沈滞状態となっている。低調な稼働率の主な原因としては、次の通りである。▶国際制裁による資金や部品、原材料の需給難▶慢性的な電力不足▶原材料供給の不安定▶設備の老朽化と技術、立ち遅れ▶内部資金や投資不足このような構造的問題により、多くの企業所が1日6時間未満だけ稼動したり、完全に止まったりする場合も多く、一部では名目上だけで運営され、実際の生産はほとんどないのが実情である。軽工業および外部投資流入企業は相対的に稼働率が高く、一部市場化·投資流入効果で改善された事例があり、重工業·鉱業など基幹産業は依然として深刻な沈滞と低い稼働率持続している。3. 総体的な経済難の未解決1990年代の大規模な食糧難と経済危機以降、北朝鮮は国家経済の完全な回復に失敗した。 この時期では「苦難の行軍」と呼ばれる深刻な経済難と食糧難が発生し、これは金日成の死亡、自然災害、社会主義圈の崩壊など複合的要因に起因したものである。その後も生産、流通、エネルギー、社会インフラなど全般にわたって構造的な難関が続いている。北朝鮮は国際的孤立と内部資源の限界によって経済難を克服できずにおり、改革·開放を体制脅威と見なし、積極的に推進できないジレンマに陥っている。特に食糧難は1990年代後半以後においても繰り返えされ、より深刻になり、数百万人の住民が飢餓に苦しめられ国家配給量が急減するなど社会全般に深刻な影響を及ぼした。1年で常に150万トンの食糧が必要な状況だ。結局のところ、北朝鮮の経済は構造的危機を克服できないまま、慢性的な不足と不安定が現在まで続いているのである。4. 国内外の移動統制制限 すべての住民は居住地を離れて他の地域に移動する際、必ず旅行許可証をもらわなければならない。旅行証は地域人民委員会で発給し、目的地に到着すれば再び申告しなければならない。 この過程で宿泊も登録しなければならず、保安署にも申告しなければならない。旅行証なく移動し摘発されれば処罰を受けることになる。平壌など一部の特権層を除けば、一般住民は地域間移動さえ自由ではない。国境地域は国家安全保衛部、人民保安部、朝鮮人民軍が厳重に統制している。脱北を試みた者は銃撃されることになり、国境には鉄条網、監視カメラ、地雷、障壁などが設置されている。パスポートは外交官、貿易関係者など、ごく少数の特権層にのみ発給され、一般住民は海外旅行が事実上不可能である。人民班(住民班)など地域単位組織を通じて住民相互監視が行われ、他の人の脱北や無断移動などを申告すれば報奨金が支払われる制度も導入されている。国家と党組織が住民のすべての移動と居住をリアルタイムで監視・統制する。このように北朝鮮の移動およびパスポートの制限は法的、制度的、物理的、社会的監視体系を総動員することによって、住民の自由を極度に制限する方式で運営されている。5. 賄賂の普及化と増加傾向2012年以後、賄賂提供の経験者比率が24.2%から48.3%と約2倍増加し、2016~2020年には54.4%に達し過半数を越えた。住民の月所得の30%以上を収奪されるという回答が全体の37.1%であり、金正恩政権後、この割合は41.4%とさらに悪化した。2023年の賄賂危険指数において、北朝鮮は194カ国のうち194位(100点満点で92点)を記録し、4年連続最下位となった。政府·公共部門全般において賄賂に対する期待がひどい状態にあるということである。公式的な許可手続きが、本来の機能を果たせず、賄賂がその代替手段として作用する。例えば、ヤンジョン事業所の買い付け指導員というポストの確保のための賄賂費用が、2023年の1年間だけでも2000ドル引き上げされた。職責売買が慣行化されており「賄賂でポストを買えば一生食べていけるほど心配がない」という認識が蔓延している。官僚制度は崩壊し、給料体系が崩れ、権力者は生計維持のために賄賂を要求する。特に上部の幹部らは直接的に下の幹部に賄賂を要求しており、これはまた下部の階層へといく。司法機関(保衛部・警察)も権限を利用し、住民を搾取し、賄賂は「生活化」となり、法律的処罰の回避手段として活用される。結局のところ、北朝鮮において賄賂は公式システムの失敗を埋める「見えない税金」として機能し、住民の生存と官僚の地位の維持のための必須の装置として定着した。これは経済回復を阻害する主な障害物として作用している。6. 公式職業において生計が成り立たない国家が支給する公式賃金だけ(月給2000~5000ウォン)では生計が不可能で、多くの住民がチャンマダン(闇市場)など非公式経済活動(商売、副業)に依存している。名目上の失業はないが、事実上「公式的失業」状態が蔓延している。生計不可能な公式賃金、つまり国家公式職業の月給は生計費を充当できず、実際の収入の78%が非公式経済活動によって発生する。 金正恩政権期の2023年10月に10~20倍に引き上げられた賃金も支給不安定性と地域別格差によって実効性を上げられずにいる。統計上の失業率は0%に近いが、20~59歳の人口のうち、実際の生産活動に参加する割合は31~62%に過ぎない。特に、平壌以外の他の地域では公式雇用人口の25~57%が「事実上の」失業状態にある。住民は食糧、医薬品など必需品を公式配給でなくチャンマダン(闇市場)を通じて購買する。この市場は1990年代の大飢饉以降、生存メカニズムとして定着し、現在は、反体制的要素とみなされながらも、政府が社会の安定のために黙認する二重的な構造を見せている。31.4%の住民が公式な職場に出勤しながらも同時に副業(家内制手工業、小規模貿易など)を並行している。公式な職場は、体制維持のための名目上な出席に過ぎない場合が多い。結局のところ、北朝鮮の労働市場は「公式的な雇用→非公式的な生計」という二重構造として運営されており、これは国家経済システムの根本的な失敗を反映している。7. 税金及び各種負担金の強制徴収と経済的負担税金(租税)は、国や地方自治体が一般財政収入のために、国民や住民に無償・強制的に徴収する金銭的義務である。負担金は特定公益事業の経費をまかなうことを目的に、その事業と密接に関連した者に法律に基づいて賦課する租税以外の金銭の支給義務だ。例えば、環境負担金や廃棄物処分の負担金などがある。税金と負担金、全て法律に基づいて強制的に徴収される。納付しない場合、強制徴収手続きが進められる。また、国家がさまざまな名目(社会的課題、愛国献納など)に税金や負担金を賦課すると、住民と企業の経済的負担が大きくなる。特に負担金の場合、同一対象について二重に賦課される場合、企業のコストの上昇と住民負担増加につながり得る。実際に負担金が企業に転嫁されれば、その負担が再び住民に転嫁される構造が発生することになる。国家の税金および各種の負担金の強制徴収は法的根拠の下に行われており、これは住民と企業の経済的負担を加重させる恐れがある。8. 中央党組織部の権力集中と社会掌握北朝鮮の中央党組織部(組織指導部)は、朝鮮労働党内で最も強力な権限を持った核心部署であり、人事、組織生活指導、監視・統制など、すべての権限を独占し、社会全般を掌握している。組織指導部は、党員登録、政策検閲、生活指導など多様な下位部署を置くことで、党員や幹部たちの理念的な忠誠と政治的信頼を徹底的に管理する。特に、組織指導部は党·政·軍を合わせた実質的権力の中心であり、北朝鮮社会のすべての政治·経済·社会·文化活動を統制できる構造を備えている。このため、北朝鮮のすべての組織と企業経営でも政治官僚と技術官僚に二元化された伝統的支配構造が維持され、党による唯一の領導体系が確実に作動する。結果的に中央党組織部の権力集中は、北朝鮮体制の安定性と持続性、そして社会全般に対する強力な統制の根幹となっている。9. 統計誤謬および虚偽報告の実態北朝鮮は、政治的目的によって統計を操作し、それを国際機関や外部に提出する場合が多く、公式発表の統計は不定期的で過大・過疎の発表が繰り返される。地方単位の人材不足、統計操作、虚偽申告、集計漏れなども頻繁に発生する。例えば、人口統計で男性の人口数の抜け落ち、死亡率の過少報告などが代表的だ。内部的にも虚偽・誇張報告が蔓延して、最高指導者ですら、現場の実状をきちんと把握できない場合が多い。金正恩氏の期待に及ばない場合、苛酷な処罰を恐れて、一線の幹部たちが虚偽の報告を引き上げられる現象が繰り返される。内部的にも虚偽·誇張報告が蔓延し、最高指導者さえ現場の実状をまともに把握できない場合が多い。金正恩の期待に及ばない場合、過酷な処罰を恐れて第一線の幹部が虚偽報告をする現象が繰り返される。これによって実際に経済難や食糧難など現場の実情を指導部が十分に認知しない構造的問題が続いている。10. 最高指導者による命令中心の非効率的な経済運営 経済運営は中央集権的計画命令経済の体制にあり、最高指導者の指示がすなわち政策になり、企業も党組織の指導の下、国家の利益を最優先にする。実績の誇示と見せつけ用の事業が蔓延しており、実質的な成果よりも政治的成果が優先視される。これは事業の実効性や経済的効率性よりも、指導者の指示による履行有無と形式的成果に集中される。このような構造は資源の非効率的配分、重複投資、現場の実態とかけ離れた計画の樹立など、深刻な非効率をもたらす。結局のところ、北朝鮮経済は最高指導者による命令中心という硬直された体系によって実質的な発展より、政治的誇示と忠誠競争に走る構造的限界を見せている。Ⅲ. 市場化の制度的定着など実施的変化の必要性北朝鮮経済のこの30年は「生存」と「統制」という二つの言葉に集約することができる。住民は、国家の手が及ばない所で闇市場を作り、賄賂や副業、非公式な取引を通じて新しい人生の方式を開拓してきた。市場化と私有化はもはや単なる生存戦略ではなく、北朝鮮社会を動かす実質的な動力となった。 しかし、この変化の裏面には依然として解けなかった宿題が残っている。中央党組織部の絶対権力、最高指導者の命令中心である硬直した経済運営、移動の自由の制限、賄賂や負担金の蔓延、そして虚偽の統計と実態の歪曲は、北朝鮮経済の「成長」がなく「持ちこたえる」という本質を示している。公式の賃金だけでは生計が不可能であり、公式統計では、現実を知ることができない社会、これが今日の北朝鮮経済の自画像である。今後、北朝鮮経済が真の跳躍を成し遂げるためには、単なる市場拡大を越え、制度的改革と権力分散、そして住民の自律性と自由を実質的に保障する変化が必要だ。チャンマダンの活力が体制の壁を越えて社会全般に広がる時、初めて北朝鮮経済は「生存」から「成長」に、「統制」から「自律」に進むことができるだろう。北朝鮮経済の未来はまだ使われていない白紙のようでもある。変化の可能性は確かに存在するが、その方向と速度は体制内部の意志と外部環境、そして住民らの選択にかかっている。韓半島と北東アジア情勢の重要な変数として、北朝鮮経済の次の30年を私たちはさらに注意深く見極めなければならないだろう。今この瞬間にも北朝鮮の市場や路地、工場や田畑には小さな変化の種がある。その種がいつか花を咲かせることができるのか、その答えは間もなく吹き荒れる未来が語るであろう。
25.06.27 -
北朝鮮インサイドキム・ミョンソン SAND研究所専任研究員北朝鮮、対米対応「1号方針」下達···対峙の代わりに「管理と対話」北朝鮮外務省が最近、現在の情勢を分析した対米対応指針を「1号方針」という形によって全幹部級に緊急通達したことが分かった。金正恩国務委員長が直接裁可した今回の指針は、米国との全面対峙の代わりに、管理型対応と条件付き対話を同時に模索する内容が核心だ。平壌の北朝鮮事情に詳しい消息筋によると23日、「外務省対外政策室が作成した米国敵対視政策の見直し報告書が金正恩委員長に掲載され、金委員長はこれを『1号方針』として承認し、全幹部級に直ちに指示するようにした」と伝えた。今回の指示文は、李在明政府発足後、米国の北朝鮮に対する変化を注視しながら、北朝鮮が主導的に局面を管理し、必要に応じて対話の余地を残しておくという戦略を盛り込んでいるという。消息筋によると、1号方針は対外政策室傘下の米国局、政策分析局、国連代表部、北京連絡船、ジュネーブ代表部など北朝鮮の主要対外外交チャンネルに同時に捕置された。平壌-ニューヨーク-北京-平壌へとつながる非公式連絡網を通じて世論探知と関係形成のための「発言作戦」を展開し、関連国との水面下調整も併行するという計画である。また、外務省次官級以上の幹部と対外政策室責任幹部の主導によって「対米融和局面試験運用チーム」を臨時編成し、非公式チャンネル担当者の2人を選抜して事前対話条件探知と世論造成任務に投入するという具体的指針も含まれた。対南ラインとの情報交換も強化する計画である。主要指針には▶米国の「条件のない対話」というサインに対する即答禁止▶融和メッセージは原則的立場だけを強調▶核·ミサイル関連交渉条件言及の禁止▶「人道主義協力」や離散家族問題など迂回通路活用▶韓国と米国をそれぞれ媒介にした間接接触の可能性探索などが含まれているという。北朝鮮は今回の指針を通じて直接対話は当分留保しながらも、局面造成のための「低強度探索戦略」をまず稼動するという立場だ。公式チャンネルの他にも国連と国際団体を通じた「非公式連絡チャンネル」確保を指示し、対米談話は既存のものよりも一段階水位を下げるものの「核心利益死守」という原則は守ることにした。消息筋は「米国と韓国が先に触れてこない限り、北朝鮮による直接言及は自制し、代わりに米国内の北朝鮮専門家を狙った間接的な世論資料配布計画まで用意された」と伝えた。今回の方針は、米国の対外政策調整局面と韓国の政権交代期という「二重転換期」を活用して北朝鮮に有利な戦略空間を確保し、強硬戦略を漸進的に融和戦略に転換しようとする意図が盛り込まれたものと解釈される。さらに、対外政策室には「失敗のない融和戦略の運用」を強調し、7月末~8月初めにおける2回の支持と後続実務組織計画が予告されたという。金与正労働党副部長が全体方針を総括指揮し、外務省の機能調整と労働党政治局レベルの統制力の復活も並行されているというのが消息筋の説明である。北朝鮮における貿易の幹部と税関の実務者たち、中国密貿易の取り締まりに不満爆発最近、平安北道における貿易機関に従事する者らのあいだで「私たちは中国の属国なのか」という不満が爆発したとされ、北朝鮮当局が、中央党幹部らを緊急派遣して発言の取り締まりに乗り出したことが確認された。このような不満は、中国当局が最近、北朝鮮との国境密貿易の取り締まりを強化したことによるものと関連している。北朝鮮の内部事情に詳しい消息筋によると、平安北道の保衛局は、5月初めに「貿易幹部たちと税関実務者らが中国側の密貿易の取り締まり強化に不満をぶつけている」という内容の秘密動向報告書を中央党組織指導部に報告した。報告書を受け取った中央党は直ちに対外経済省と経済部所属幹部5人を1日、太川郡へと秘密裏に派遣し平安北道の貿易会社の従事者と税関·通関従事者を非公開で招集した。会議において、貿易者らの間では「朝鮮は中国の顔色ばかり見ている」、「中国のいいなりになるならば、むしろ中国の一つの省になったほうがいいだろう」という不満が出たという事実が指摘された。消息筋は「中国が国境地帯密貿易を集中的に取り締まり、平安北道の貿易会社の実績が大きな打撃を受けているという、内部の不満が出ている」、「当局はこれを共和国の対外威信を揺さぶる危険発言と判断して緊急招集したこと」と伝えた。会議に参加した中央党幹部らは「朝中関係は相互戦略的パートナー関係であり、中国干渉を誇張したり属国扱いされるように話すことは内部崩壊を自ら招く」と警告した。また「我らの元帥様(金正恩)が直接平安北道を対外貿易の戦略地帯に指定し格別に世話をしている」とし「中国式開放や市場化は社会主義の核心を崩す恐れがあるので無責任な発言を慎め」と強調した。貿易者や税関の実務者らには「密貿易の取り締まりで困難があっても内部不満を外部に漏らせば、中朝関係に誤解を呼び起こすことになる」という警戒令も下された。消息筋は「中央党が異例的に貿易機関者たちのみ別途に集めて警告状を出したのは中朝間の密貿易対立が内部での発言統制を越えて政治的問題に飛び火しかねないという危機意識のため」とし、「これによって、平安北道貿易者たちに対する監視がいっそう強化されるだろう」と伝えた。北朝鮮はコロナ19以来、中国との公式貿易とともに密貿易ルートを開いておいた。特に地方経済発展20x10政策、農村文化住宅建設、水害復旧など過度な負担を抱えた地方当局が、これを解決するために密貿易にさらに依存してきた。しかし最近、中国政府が国境密輸ルートを大々的に取り締まっており、北朝鮮内部でこれに対する不満が浮かび上がっているものとみられる。平壌地下鉄にはコッチェビ、駅には「花売り娘たち」… 経済失敗の副作用北朝鮮当局が無理な国策事業と軍事力増強に天文学的な資金を注ぎ込んでいる間、民生経済が破綻の水準に達している。平壌の地下鉄駅にコッチェビ(ホームレスの青少年)が再び現れ、平城など大都市の鉄道駅付近ではいわゆる「花売り娘たち」と呼ばれる女子大生が性売買に追い込まれる残酷な現実が捉えられた。最近、北朝鮮内部事情に精通している複数の北朝鮮消息筋によると、平壌の地下鉄駅と中心街のいたるところでぼろぼろな身なりの浮浪児たちが物乞いを行っている。これらの大半は親を失ったり、経済難で路頭に追い出された青少年たちとされる。経済難の影響は駅周辺において、より一層となっている。平城駅、高原駅など列車がしばらく停車する駅周辺は性売買が事実上、公然と行われており、価格まで定額制のようになっているとされている。ある消息筋は「平城駅では女性の胸を触ったら10元、下着を見せてくれば、30元、性関係は100人民元水準で取引されている」と伝えた。さらに一部の貧しい両親たちは家族生計のために幼い娘たちに駅に出て「男を捕まえろ」として性売買を促しているとされている。駅周辺の「走り屋(移動商人)」が主な顧客層として挙げられる。一部の女性は靴下1足や飴1袋のために体を売ることもあるという。このような性売買の広がりによって、性病と各種感染症に対する恐怖は依然としてある。性関係の代わりにキスやオーラルサービスが好まれるということが背景にある。一部の女性たちは、電柱や電光掲示板に価格と連絡先を書いて、露骨に客を集めたりもする。より大きな問題は北朝鮮の青年層の麻薬中毒である。韓国に脱北した住民たちの間では「北朝鮮にいる子供たちが麻薬なしには生きられない」という言葉が公然とされている。売春や麻薬が経済難の「必須生存手段」となっているということである。経済破綻は凶悪犯罪の増加にもつながっている。両江道、慈江道、咸鏡北道などの国境地帯では最近、殺人と強盗事件が頻発している。北朝鮮事情に詳しいある消息筋は、「家庭を荒らしたり、食料倉庫を襲撃して監視者に暴行を加えるなど、犯罪が組織化され、凶暴化している」と伝えた。北朝鮮当局はこのような事件を「反社会主義行為」と規定し、社会安全省(警察)と保衛部によって大々的な検問と取り締まり強化を指示した状態にある。住民の間では「今は夜道どころか昼間も安心できない」という不安感が広がっている。食糧価格が上昇する中、北朝鮮は内部食糧難の責任を外部に転嫁している。北朝鮮労働党機関紙の労働新聞は21日、「敵の孤立圧殺策動で深刻な食糧難が造成された」と主張した。消息筋は「金正恩政権の無謀な建設・軍事功績誇示が住民の生活を根こそぎ瀬戸際に追いやった」と伝えた。
25.06.27 -
時事分析朝鮮戦争70周年、戦力強化に邁進する北朝鮮ヤン・ウク峨山政策研究院研究委員朝鮮戦争が起きてから70周年になる。私たちが戦争を忘れても、戦争は我々を忘れない。戦争の危険を忘れている国家に、戦争はまた現れる。朝鮮戦争がそうであった。準備なしに迎えた戦争の結果は悲惨だった。当時、国軍は、北朝鮮の半分にも満たなかった。北朝鮮はおよそ10個の歩兵師団(40個連隊)に約20万人の兵力を保有した。特に中において朝鮮人の兵力を、ソ連でT-34を含めた戦闘車242台を受け取り、侵攻の主軸とした。何よりソ連軍事顧問団は、機動戦の戦術を伝授し、侵攻の細部なところにまで加担した。これに比べ国軍は8個師団規模だったというが、22個連隊で兵力は10万人にも達しなかった。野砲火力で比較すると、曲射砲は北朝鮮に比べて8倍以上、迫撃砲も2倍以上少なかった。すでに北朝鮮は1949年以降、38度線の国境付近において様々な挑発をしており、戦争の機会をうかがっていたが、当時の国防長官は、「北進統一をしよう」と声高に主張し、実際の戦争準備は怠っていた。質的優位 vs 核優勢核を除けば、北朝鮮軍の戦力は大したものではないと見ることもできる。これはある程度妥当である。私たちは、目覚ましい経済成長と半導体など先進国型の先端産業を基盤と先端の在来戦力で明白な優位にある。私たちの戦力の基調は先端戦力の質的優位を通じて戦争を抑制するものである。ところが、兵営国家である北朝鮮を相手に定量的優位を確保することは難しい。一例として、地上軍兵力は、北朝鮮の40%水準に過ぎず、地上戦の主力である戦車は、北朝鮮の半分水準である2千台あまりに過ぎない。世界最大水準の人口の急減で、韓国軍の規模は2022年頃に50万人に減少、2040年頃には35万人に減少する見通しだ。しかし、私たちは質的優勢でこれを克服する。第三世代以上の戦車を約80%保有し、約4千台のうち第三世代級が10%にも満たない北朝鮮を圧倒する。さらに、K9自走砲の精密火力と500機を超えるヘリコプターの戦力で立体的な機動と火力を加えれば、北朝鮮は量的優勢だとしても耐えることはできないだろう。さらに先端技術とこれを支える莫大な予算を必要とする海軍力と空軍力で大韓民国の優位は圧倒的だ。このような格差を誰よりもよく理解しているのは北朝鮮だ。そのため韓米の先端戦力を無力化するために核を掲げてきた。北朝鮮は2021年8回党大会以後、核使用を強調する。戦術核を中心に核戦力を構成して、極超音速ミサイル、固体燃料ICBM、魚雷、ミサイル潜水艦など戦略核兵器も披露した。核の脅威を現実化するには、北朝鮮はいつでも核を使用することができると誇示しなければならなかった。金正恩は2022年に核兵力の政策法で在来の戦争を含めあらゆる状況で核を使用できると規定し、自分がどれほど狂人であるかを示してきた。再び在来戦力を強化する北朝鮮それでも核は使用できない武器だ。ロシアによるウクライナ侵攻においてプーチンは、核の脅威によって米国と西欧のウクライナ支援とウクライナのロシア本土侵攻を阻止してきた。しかし、2024年8月ウクライナのクルスクへの侵攻の際にロシアは核兵器を使用できず、クルスク奪還のためにロシアは北朝鮮軍を迎えなければならなかった。ロシアの核戦略を追従していた北朝鮮にとって大きな教訓となった事件だった。事実として、金正恩は核戦力だけを強化してきたわけではなかった。政権後、戦車と自走砲など主力兵器を現代化する努力を続けた。ただし、限定された財源の中で、核や通常戦力の同時武装は不可能なため核を求めたのだ。そして8回党大会によって核戦力化がどの程度完成になったため、北朝鮮は最先端の通常戦力に徐々に目を向けている。代表的なものがまさに偵察能力だ。北朝鮮は軍事偵察衛星と戦略偵察用無人機を確保するという案を明らかにした。これによって、北朝鮮は2023年11月、「千里馬-1」宇宙ロケットで「万里京-1」偵察衛星の打ち上げに成功し、「セッピョル-4」高高度偵察機と「セッピョル-9」攻撃無人機を開発した。しかし、金正恩が抱いている野心ほどは北朝鮮の技術力が追いつけず、資源には限界があった。ところが2024年ウクライナ戦争への参戦によって状況が急変した。北朝鮮はドローンとAIが中心となったウクライナ戦争に突入することによって、血の教訓を学んでいる。また、参戦の代価として金銭的利益はもちろん、新しい装備と軍事技術を獲得している。北朝鮮軍のルネサンスが始まっている。
25.06.27 -
ウェブトゥーンで見る在日同胞青年の人生 25.06.26 -
時事分析北朝鮮の強引な核実験がもたらすブロックバスター級の災い ファン・シワン 統一ビジョン研究所 研究員5月1日、北朝鮮の咸鏡北道吉州郡一帯で地震が発生した。今年、該当地域で発生した2度目の地震だ。専門家らは、2006年から2017年まで北朝鮮が実施した計6回の核実験によって、該当地域の地盤が弱まったことが原因だと見ている。特に2017年9月3日、北朝鮮が豊渓里核実験場で実施した6回目の核実験は規模5.7の人工地震を誘発し、数分後には実験場上部の地盤が崩壊し規模4.1の余震を発生させるほど強い核実験を進めた。実際、北朝鮮の6回目の核実験実施後、その年の末まで吉州郡で7回の地震が観測され、2023年には最大値を記録し、33回の地震が発生した。現在までこの地域では計88回の地震が発生したが、6回目の核実験以前までは一帯で発生した地震が一度もなかったという点を考慮する時、核実験と地震との関連性が分かる。もしかしたら、これは地質学的災難の序幕かもしれない。 韓半島で最も高い高さを誇る標高2744mの白頭山。ここは946年、人類が記録した歴史上最も強力な火山爆発の一つである「ミレニアム大噴火」を起こした。 この爆発はVEI7級に相当し、これは広島原爆の16万倍規模に当たると言われている。ちなみにポンペイを滅亡させたベスビオ火山爆発と1980年米国セントヘレンズ山がVEI5級と評価されており、その強力な威力を推察することができる。ミレニアム大噴火以降も、白頭山は10回あまり、大小の噴火を繰り返した。 北朝鮮が主張する最後の火山活動である1925年以降、100年間火山活動がなく、休火山と認識している場合が多いが、白頭山は明らかに活火山に分類される。特に現時点で北朝鮮の核実験によって白頭山が爆発しないか憂慮される理由は、2002年~2005年に観測された白頭山一帯の3000回以上の微小地震観測のためだ。この現象を追跡した中国地震局地質研究所は、これらの地震が単なる自然地震ではなく、地下のマグマ房の膨張と移動による信号だと分析した。その後、2016年に英国、米国、北朝鮮の研究陣が共同研究を通じてサイエンス誌に登載した報告書「Evidence for partial melt in the crust beneath Mt. Paektu」によると、白頭山の地下5~20kmの深さにおいて溶融体を確認したとされている。北朝鮮は、この敏感な地域から100キロも離れていない吉州郡豊渓里の海抜2200メートルの万塔山一帯に核実験場を作って実験を敢行した。ここが険しい山岳地形で外部偵察回避に有利であり、硬い花崗岩の基盤岩層が核実験の暴圧を吸収できるほど強力だと判断したためだ。しかし、専門家らは、核実験によって発生する人工地震がマグマ活動に刺激を与えかねないと警告している。ポンペイで起きた恐ろしい災いが、韓半島で起きる可能性もあるということだ。核実験の余波は地質学的災難だけでなく、地域住民たちにも災いをもたらした。かつて、同地域で生産されるマツタケやヤマメは、8号製品(北朝鮮では高官級にのみ提供される最高級商品)に分類されていた。しかし、核実験後、一帯は地獄と化した。マツタケとヤマメが消えたのはもちろん、原因不明の病気と奇形児出産、癌発病率増加などが報告された。チャン·インスン元韓国原子力研究所所長によると、実験後、高温で花崗岩が溶けて再び岩石になってしまうため、放射能が外部に漏れる可能性は低いが、クラック発生、地盤崩壊や共同崩壊などの理由から放射能が流出する可能性があると言及し、北朝鮮の技術的限界によって流出の可能性は開かれていると言及した。北朝鮮は現在、放射能流出に対する公式立場を明らかにしていない状態だ。 該当地域の自国民にも放射能流出に対する危険性を口にしており、一帯には「鬼病」という名前で放射能が原因だという事実も知らないまま死んでいる。咸鏡北道吉州郡出身の「キム·ヨンスク」氏(仮名)とのインタビューによると、吉州郡の人々は豊渓里から流れてくる水を主な水源としているが、核実験場から約30キロ離れているにもかかわらず、放射能にさらされて原因不明の病気で死んでいると言及し、本人も大韓民国に来る前まではただの病気だと思って生活していたことを明らかにした。現在、北朝鮮は核実験後、放射能流出による住民の健康被害を外部に知らせることを遮断するため、吉州郡と豊渓里一帯の人々の外部移動を徹底的に制限している。ちなみに「キム·ヨンスク」氏の息子も放射能流出による病気で死亡した。2018年5月、北朝鮮は豊渓里核実験場の2、3、4番坑道入口を爆破し、閉鎖を宣言した。しかし、2022年に3番南側坑道の新しい入口を掘設し、2023年には同一坑道内の浸出水を排出し、坑道入口周辺に電気および通信用と推定されるケーブルが識別されているという点を見れば、いつでも核実験再開できるように準備していることが分かる。このような北朝鮮の強引な行動は、韓半島の地質学的安定性と北朝鮮住民の生命を脅かしている。韓半島に恐ろしい災難が到来する前に、国際社会はこのような脅威に対してより積極的な関心と対応が必要だ。
25.05.23 -
北朝鮮インサイドキム・ミョンソン SAND研究所専任研究員北朝鮮、「白頭-漢拏」統一スローガンを「白頭-松岳」に縮小北朝鮮が韓半島全体を包括した既存の統一象徴スローガン「白頭から漢拏まで」を廃棄し、これを「白頭から松岳まで」に代替したことが確認された。これは事実上、南北をそれぞれの国家と規定する「敵対的二国論」を具体化し、自国の領土概念を北部地域に縮小しようとする戦略の一環と解釈される。北朝鮮の労働党機関紙である「労働新聞」は19日付の紙面で、「白頭から松岳まで─朝鮮の朝が明るくなる所で」という企画連載を新たに始めた。北朝鮮全域の発展像を示す趣旨だと説明したが、該当表現は「白頭山から開城松岳山まで」を祖国の境界と規定しようとする政治的意図が内包されているという分析がされている。松岳山は開城の南側に位置した海抜488mの山で、韓半島の地政学的中心部であり朝鮮戦争以前まで軍事的に南北が激しく対峙した戦略的要衝地だ。北朝鮮がここを新しい領土救護の南端に設定したのは事実上、松岳以南を自国領土外、すなわち「外国」と見なすという信号と解釈される。実際、北朝鮮は昨年から「南側国境線」という表現を公式に使用しており、「白頭-漢拏」、「統一」、「民族」などの用語は内外の広報文書とメディアから姿を消した。このような変化は地図と名称にも反映されている。最近、北朝鮮で発刊された世界地図には、韓国を「韓国」、北朝鮮を「朝鮮」と明記、二つの国家体系を既成事実化した。また、板門店内の「統一閣」の名称を「板門閣」に変更し、国家である「愛国歌」の歌詞から「三千里」という表現を「この世」に修正し、南北統一の象徴語を除去した。南北和解を象徴する歌である「お会いできて嬉しいです」もやはり最近、公演禁止措置が下されたことが分かった。専門家らは、金正恩政権による一連の措置が、統一を目指す戦略から分断の固着化を通じた体制正当性の確保に転換されたことを意味すると見ている。金日成と金正日は統一を外交戦略の手段として活用したが、金正恩は「二つの朝鮮」戦略を実質化し、分断状態を自国のアイデンティティの核心メカニズムとして再定義しているという分析だ。北朝鮮は昨年、憲法改正を通じて韓国を「第一の敵対国」と明示した。金正恩は2023年12月、南北関係を敵対的二国と規定したのに続き、今年1月の施政演説においても「大韓民国を徹頭徹尾第一の敵対国として、不変の主敵と見なすよう教育教養事業を強化しなければならない」と強調した。これにより北朝鮮は憲法·地名·歌·地図など国家アイデンティティのすべての領域において「統一を消す」という作業を本格化しており、「白頭から松岳まで」というスローガンはその象徴的断面と評価される。北朝鮮、新型航空武装を公開···空軍の戦力量から質的変化か 北朝鮮メディアは17日、金正恩国務委員長の空軍第1師団隷下飛行連隊の現地指導場面を公開し、北朝鮮が開発したという新型空対空ミサイルと精密誘導爆弾も公開した。また、15日に西海上で実施された大規模空軍訓練場面も公開した。高難度の技術が必要な空対空ミサイルは、韓国もまだ開発していない。韓国軍は今年、短距離空対空誘導弾事業の研究開発を始め、2032年までに研究開発を終え、2035年頃に戦力化する計画だ。北朝鮮のこれらの新型航空武装については、まだ明らかになっていない。名前や開発経緯、内部構造や作動原理、性能も一切発表していない。しかし、空対空ミサイルの場合、デザインだけを見れば、中国製PL-12空対空ミサイルによく似ている。PL-12ミサイルは2005年から中国空軍に実戦配備され、射程は最大100キロだ。 速度はマッハ4以上、データリンク方式で誘導される。終末誘導時には能動レーダーを使用する。このミサイルがMiG29戦闘機にシステム統合されたという点も重要だ。MiG29は、北朝鮮空軍が保有している中で最も最新鋭の戦闘機だ。もちろん、それでも数的に微弱で(最大35台稼動中と推定)、最後に導入されてから約20年ほど経っている。運用できるミサイルも旧式だけで、標的探知や照準性能も旧式化していた。しかし、このミサイルが本当にPL-12に近い水準の性能を持ち、MiG-29に確実にシステム統合されたなら、既存のR-23、R-24、R-27など旧型ミサイルに依存していたMiG-29の戦闘力を大きく高めることができる。北朝鮮は空対空ミサイルとともに精密誘導爆弾も公開した。既存の自由落下爆弾に滑空装置と衛星航法装置または電子光学照準装置を装着し、射程距離と命中率、運用柔軟性を高めたものと見られる。このような開発方向は、米国の合同直撃弾(JDAM)やロシアのKAB誘導爆弾から強い影響を受けたものと見られる。ちなみに、米国のJDAMの場合、射程距離24/72km(後者は射程距離延長型)、精度はGPS誘導/慣性誘導時、それぞれ円形公山誤差5/30mである。円形空挺誤差は弾の命中率を表す単位で、発射した弾のうち標的に最も近い50%の弾着群の半径を表す。今回の訓練では空対空戦闘訓練だけでなく、防空訓練と地上攻撃訓練も行われた。朝鮮中央通信によると、実戦に備えて戦闘準備態勢を向上させるのが今回の訓練の目的だという。金正恩委員長は、「訓練結果に非常に満足しており、空軍戦力の現代化を非常に重視する」と明らかにした。もちろん、今回公開された北朝鮮製航空武装が、外国製ほどの性能を提供するという根拠は、まだどこにもない。しかし、これらの武装が中国またはロシアの技術支援を受けて作られたと見る根拠としては十分だ。これらの国家は、北朝鮮と戦略的理解を共にしてきたためだ。特に中国と北朝鮮は、相手国のミサイル技術、防空体系技術、電子戦技術などを相互参照してきた。最近、中国の国防科学技術が大きく発展し、このような中朝関係を土台に中国技術が北朝鮮に流入する可能性も高くなった。両国が研究成果を共有したり、相手国の完成品の逆設計を許容したりする方式によってだ。もし、北朝鮮が外国の軍事技術を十分に習得し、今回の航空武装に適用したとすれば、それは北朝鮮の軍需産業が国際制裁の下でも相当な能力を発揮する証拠と見ることができる。これと関連し、韓国合同参謀本部(合参)も、この武装グループがロシアの支援を受けて開発された可能性があると明らかにした。合同参謀本部のイ・ソンジュン広報室長は19日、国防部の定例ブリーフィングで、「韓米情報当局は今月15日午後5時ごろ、西海上で行われた北朝鮮訓練を注視していた」とし、「北朝鮮が公開したミサイルや誘導爆弾などについて分析している」と明らかにした。北朝鮮が派兵の見返りにロシアから軍事技術の移転を受けて開発した可能性については「関連があると見ている」とし「具体的にどの部分に反映されているのかは分析がさらに必要だ」と付け加えた。このような新型航空武装の出現は、韓半島地域の安保に与える意味が大きい。2022年、国防白書によると、2022年12月現在、北朝鮮空軍の戦術機数は810機、韓国空軍の戦術機数は410機だ。もちろん、北朝鮮空軍機は、韓国空軍機より大きく老朽化している。また、経済難と対北朝鮮制裁によって、新しい軍用機を購入することも難しい。しかし、とりあえずは量的な優位を占めている。もし、今回登場したような新型航空武装が大量生産され、既存の北朝鮮航空機にシステム統合されれば、北朝鮮は既存の量的優位を質的優位に転換させることもできる。また、このような武装形態の出現は、中国やロシアとの軍事協力がさらに強固になった証拠である可能性もある。これは地域安保に大きな影響を及ぼす。したがって、国際社会の適切な関心と対応が求められる。ただ、このすべてが偽りである可能性も無視できない。合同参謀本部のイ・ソンジュン広報室長は、北朝鮮の空対空ミサイル開発の主張について、「北朝鮮は欺瞞や誇張をする場合が多かった」とし、「部品や材料などの問題で戦力化に遅延が生じる場合が多く、今回の兵器体系も相当な時間がかかると判断している」と述べた。北朝鮮のロシア・ウクライナ戦争における参戦利益は…経済分野の「ゲームチェンジャー」にはなれない最近における北朝鮮とロシアは、北朝鮮軍のロシア派兵およびロシア・ウクライナ戦争への参戦事実を後になって認めた。それだけでなく、ロシアはこの戦争で北朝鮮軍の貢献に対して賛辞を送り、これを決して忘れないと公に述べた。北朝鮮は果たして今回の派兵で何を得たのか。具体的な規模は分からないが、韓国国防研究院(KIDA)が4月に発表した資料によると、約200億ドルと推算される。韓国ウォンで27兆ウォン以上だ。北朝鮮の国内総生産(GDP)規模40兆ウォンの3分の2にもなる。北朝鮮の慢性的な食糧難も33年間解決可能な金額だ。その中で核心は、やはり北朝鮮の兵器および兵力の輸出だ。北朝鮮はロシアに大量の砲と弾薬を輸出した。特に弾薬はいくら低く見積もっても400万発、高く見積もっても800万発を輸出したものと推定される。これは消耗戦の様相に突入して久しいロシア・ウクライナ戦争において、ロシアが消費してきた弾薬の少なくとも60%に当たる量だ。言い換えれば、ロシアが使用した弾薬の大半が北朝鮮産だということだ。ロシア・ウクライナ戦争の終戦後も、ロシアは戦争で消耗した装備を補充するのに北朝鮮の支援を相当部分受けるものとみられる。また、韓国の国家情報院の発表によると、ロシアは北朝鮮軍1人当たり2000ドルの月給を支給している。北朝鮮の派兵延べ人員が1万5000人だから、単純計算しても月3000万ドルが北朝鮮軍の賃金として支給される。北朝鮮当局は、この金額の大半を兵士に渡さずに横領している。武器や兵力の輸出によって獲得した現金のほかにも、北朝鮮はロシアから多様な有·無形の資産を獲得したものとみられる。第一に挙げられるのは食糧とエネルギーだ。ロシアは派兵の見返りに北朝鮮に食糧とエネルギーを提供したという。北朝鮮住民の生活と産業を維持させる上で欠かせない重要な資源である。第二に、先端軍事技術の移転だ。最近、進水したチェ・ヒョン艦の事例からも分かるように、北朝鮮はロシア・ウクライナ戦争以後、著しく軍の現代化に速度を上げており、ロシア技術の適用の痕跡が見られる。世界においても首位圏にあるロシア軍事技術は、北朝鮮が今後長い間、軍の現代化に邁進する動力になるであろう。第三に、外交分野での外部効果だ。北朝鮮のロシア・ウクライナ戦争に対する支援後、ロシアは国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁案件ごとに拒否権を行使している。このため、国際社会の対北朝鮮制裁効果は弱まっている。第四に、北朝鮮とロシアによる両国間の経済交流の強化効果だ。これまで北朝鮮の伝統的な交易国は中国だった。しかし、この戦争以降、北朝鮮とロシアの両国間の貿易は大幅に増加した。プーチン大統領補佐官のユーリ·ウシャコフは、2023年のロ朝交易規模を2022年の9倍に達する3440万ドルと発表した。2024年はこれよりさらに増えた可能性がある。また、北朝鮮は石油、食糧、肥料の調達網をロシア中心に増便している。北朝鮮は、対ロシア産業において人力の輸出も活発に進めている。1万5000人の北朝鮮労働者がロシアに派遣されたと伝えられている。ロシアは青年たちが軍隊または防衛産業体に入って労働力不足を体験しているためだ。北朝鮮当局はロシアに派兵された労働者の給与も搾取しているということである。残る疑問はこうした「戦争特需」が北朝鮮に実質的にどれだけ役立つかにある。韓国の仁川大学北東アジア国際通商物流学部のチョン·スンホ教授は、「ロシア・ウクライナ戦争以後、ルーブルの価値が引き続き切り下げられてきた点、ロシアとの交易量が北朝鮮貿易規模の1%前後と微々たる点、ロシアから食糧とエネルギーが輸入された後も北朝鮮の国内物価が安定しない点などを挙げ、経済効果は大きくないだろう」と推算した。また、北朝鮮の劣悪な物流インフラ、相互補完的でないロ朝貿易構造、ロ朝とともに三者ブロックを構成しようとしない中国の態度が、ロ朝貿易と協力増進の障害になると見ている。
25.05.23 -
イデオロギーから見た朝鮮総連の歴史朝鮮総連の没落と主体思想の虚像-元社会主義者の告白 カン・ヨンジ東アジア総合研究所理事長 私は1960年代末、日本の大阪で朝鮮総連の学生たちと共にマルクス経済学を勉強していた青年だった。引き裂かれるほど貧しい在日朝鮮人2世として私は「なぜ私たちは貧しいのか。なぜ分断されたのか。なぜ私たちは朝鮮民族という名で差別を受けなければならないのか。」という質問を絶えず投げかけながら生きてきた。 人間らしく生きる人生とは何か、その答えを探すために私はマルクスを勉強した。 大阪市立経済大学は当時、マルクス経済学の本山であり、関西地域は日本左翼運動の中心地だった。ここで私は自然に朝鮮総連系の学生たちと討論し、一緒に勉強する雰囲気の中にいた。 当時、日本の学界では北朝鮮が韓国より経済的に進んでいると評価された時期だった。私も「自立的民族経済」を実現した理想国家として北朝鮮を眺め、北朝鮮の経済を勉強しながら次第に北朝鮮の政治思想にも関心を持つようになった。 朝鮮総連結成60周年を祝う在日同胞大祝祭が、2015年5月に東京朝鮮中高級学校で行われた。/朝鮮新報あまりにも貧しい在日朝鮮人の現実を見て、私は資本主義の矛盾を肌で感じ、社会主義が真の人間解放の道だと信じた。特に主体思想は「朝鮮式社会主義」で包装された創造的理論のように見えた。しかし、私の社会主義への信念に失望をもたらした決定的な転換点はすぐに訪れた。 1968年、朝鮮総連は公式に金日成の主体思想を組織の理念として採択した。マルクス·レーニン主義を創造的に継承したという説明が後に続いたが、実状は金日成偶像化と首領中心思想の絶対化だった。 私は朝鮮文化研究会という自律学術会に参加していたが、そこには朝鮮総連、左翼系、韓国籍など多様な学生たちが集まっていた。私は集いにおいて朝鮮総連の学生に「なぜ主体思想がマルクス主義の最高峰なのか」と尋ねた。 しかし帰ってきたのは論理的反論ではなく「それは質問自体がブルジョア個人主義である」という攻撃だった。結局、私は「個人英雄主義者」という烙印を押され、会から追い出された。 皮肉なことに、社会主義の理想に最も忠実だった私の質問が罪になった。朝鮮総連との決別は、私に真の社会主義とは何かを再び問わせた。 私は資本論を再び読み始め、マルクス·レーニン主義を深く掘り下げた。 そして、とうとう気がついた。現実の社会主義が常に全体主義に帰結するのは単なる歪曲の問題ではなく、思想そのものの構造的限界だという点を。 北朝鮮の現実は人民の解放ではなく、首領に対する盲従、階級のない独裁、世襲という反社会主義的実践に帰結した。主体思想は民衆のための解放ではなく、民衆の上に君臨する権力を正当化する手段だった。朝鮮総連はその権力の外郭宣伝基地であり、質問は裏切りであり、沈黙は忠誠として強要された。 私は、朝鮮総連の衰退は単に外部の圧力や時代の変化のためだけではないと思う。内部の硬直性、思想に対する批判不許、人間に対する理解不足─これが朝鮮総連を衰退させた本当の原因だ。思想は絶対化する時に危険となる。信念が質問を抑圧する時、それはもはや思想ではなく教理であり、結局のところ人間を抑圧する。 1990年代に冷戦が終息した時期、私は「東アジア総合研究所」を設立した。韓半島問題を民族主義ではなく東アジア的な視点で見ようとした。 統一は単に南北の問題ではなく、韓半島と周辺国全体の平和と協力という構造の中で論議されなければならないという信念のためだった。 社会主義が人間を抑圧する方法で実現すれば、それは真の社会主義ではない。私たちが追求しなければならないのは思想ではなく人間だ。真理はいつも「なぜ」という質問から始まり、その質問が許されないところに思想の自由はない。
25.05.23 -
脱北者の視点から見た帰国事業騙されて地獄へ――朝鮮総連の虚偽に翻弄された33年の北朝鮮生活を振り返って 金柱聖 脱北作家少し前から韓国のケーブルテレビで日本のドラマが見れるようになった。日本生まれの私からしてみると懐かしいコンテンツでもあった。あれこれ見ているうちに私の目にとどまり胸を打つような感動を覚えたのドラマが、米倉涼子主演の"ドクターX“というドラマだった。主な主題は人の命を助ける大門みち子という外科医の物語である。あらゆる状況におかれても人の命を助ける主人公の気質からもう一度、命の大切さと生きて行くことがどれだけ重要な事なのかを思い知ることが出来た。実はこのドラマが好きになった理由は他にもあった。2年前、全身の筋肉が固くなりだし原因不明の病に伏せて最終的に宣言された病名が血液癌だった。死ぬかも知れないと思いきや、表現の出来ない恐怖と絶望感が津波のように襲ってきた。死に直面したその時、私は過ぎ去った60年を振り返って見た。日本で生まれ、中学校迄の14年、そして総連幹部だった祖父と共に帰還事業で北朝鮮に渡り33年、命をかけて脱北し韓国での17年、3ヶ国を巡った人生60余年であった。2003年1月、日本の新潟から北朝鮮の元山へ出航する「万景峰-92」号の乗客たちが、朝鮮民主主義人民共和国の国旗を振っている。北朝鮮は、在日朝鮮人の帰国事業に使用していた「万景峰」号の老朽化に伴い、1992年に「万景峰-92」号を建造した。/VOA在日朝鮮人3世として日本の兵庫県で生まれた私だった。幼いころから日本語が喋れて普通に漫画の本を読んだり、お爺ちゃんと一緒に銭湯にいったり、カップラーメンにボンカレーを食べて喜んでいたごく普通の子供だった。然し私の祖父や祖母は家では朝鮮語で喋りそして部屋には金日成の肖像画がかかっていた。そして夜寝るときもお爺ちゃんの枕許のラジオからピョンヤン放送が聞こえていた。物心ついて朝鮮学校のスクールバスに乗って朝鮮学校に通い出したころ、私は"在日朝鮮人"の3世だという事を悟った。つまり、日本人では無いのに日本で生まれたのだった。そして"我が祖国"という言葉と北朝鮮が母なる国だと言うことを教わった。"それ何処なの?""北朝鮮、公式国名は朝鮮民主主義人民共和国""めちゃ、長いね。ほなら南朝鮮は何?""そこは韓国という別の国名があるんよ"何時しか、友だち達とこの様な会話をしたこともあった。大きくなるに連れ祖国という国が南北に分断しており、北は地上の楽園で南は生き地獄だと教わりその通りだと思っていた。共に、神格化された金日成元帥様に対する崇拝心は高まる一方だった。そして1976年に夢と希望を抱き地上の楽園だと信じていた北朝鮮に渡った。帰国船"万景峰"号からかの地に一歩踏み出したその瞬間、信じられない光景が目の前に繰り広げられた。同じ服を着て同じ髪型した人たちが居た。天使が飛んでいるかも知れないパラダイスには素っ裸の子供が泥まみれになって路上をうろついている。バスが荒馬のようにピョンピョン跳ねたり、排気ガスが車内に充満する。何十年も昔にタイムスリップしたようだった。現実は少しばかりではなく完全に違っていた。地上の楽園では無く地下の地獄とも言いたいところであった。夢で有って欲しかった。そして帰りたかった。少年ジャンプを読みながらかっぱエビセンを食べたかった。"ここでは口は喋るためにあるのでは無く自分の考えた事を塞ぐ蓋だと思え"北朝鮮に渡って先に帰った在日から聴いた言葉を理解するのに10数年かかった。祖国という国、母なる国という所に行けば夢も希望も叶い幸せな人生を送れると思っていたが全てが妄想だった。私を溺愛し北に連れてきた祖父も一年足らずで亡くなってしまった。北朝鮮での33年間、今になって振り返ってみると、人間として想像を絶する体験をした思っている。一言の言葉を間違ったため、政治犯に追い立てられたり、見せ物の様に公開処刑を行い冤罪、連鎖罪という名目で何の罪もない親兄弟に罪を負い被せて処罰を与える所であった。人を品物のように階級というヒエラルキーで縛り、差別し粛清するのが教えられた私の祖国であった。"これで、やっと日本に行けるな"在日帰還者と共に北朝鮮に渡ったある日本人夫が目を瞑る前に残した最後の言葉であった。自由どころか人権すら無いあの国で9万人に至る帰還者が殆んど亡くなったと思える。それ以外にも何の罪もない平凡な日本人を拉致した国が北朝鮮でもある。1990年代、集団餓死を直接見た私はどうすれば檻のような北から逃れられるかを考えていた。多分、殆んどの在日帰還者は私と同じ気持だったと思う。大人になって解ったことだが北に帰還した殆んどの在日の本籍地は韓国だった。つまり、私を初め多くの在日の祖国は韓国だったのだ。北朝鮮でも私たち在日帰還者を階級別に選り分けながら"南朝鮮出身者"としていたのだった。結局、色んな美辞麗句でおだてたり、扇ったりして連れ出しておいて差別をしたという事なのだ。千載一遇の機会を得て2度の脱北を図り2008年40代の年齢で見事抜け出せることが出来た私は韓国に定着した。所謂、祖父の生まれ故郷、そして本当の祖国に戻ってくることが出来たのだった。韓国に来た脱北者の歴史もかれこれ30年近くになる。その間、医師、実業家、教授、等など脱北者が至るところで社会的地位を保つようになった。今までの人生のうち一番酷く惨かった、そして惜しかった人生は北朝鮮での33年かだった。そこから逃れられた事は本当に幸運だったと思っている。色んな銘柄で呼ばれて来た私は残り僅かな人生をただ、普通の人間として平凡に暮して行きたい。自由が与えてくれる素朴な幸せを、日々感じながら生きていこう。
25.05.23 -
総連70周年に際しての一考察- 金正恩による「二つの国家論」が在日コリアン民族教育に投げかける前例なき試練 -キム・ウンギ(金雄基) (翰林大学日本学科副教授) 在日本朝鮮人総聯合会(以下総連)は5月25日に創立70周年を迎える。この組織の歴史は、在日コリアンというディアスポラ集団の複雑な軌跡と深く交錯している。中でも朝鮮学校は教育·文化事業を通じて形成される総連系同胞社会の維持と再生産機能を担ってきた。現在、この共同体が金正恩朝鮮労働党総書記の「二つの国家論」という政策転換によってその根幹から揺らいでいる。本稿はこの危機が単なる組織の動揺にとどまらず、総連と朝鮮学校を中心とした同胞社会が長い間依拠してきた「民族教育」理念と実践にどれほど深刻な打撃を与え、彼らのアイデンティティ形成にいかなる課題を投げかけているのかについて論議を試みる。 総連系同胞社会は「一つの朝鮮」の実現と朝鮮民主主義人民共和国(以下北朝鮮)を唯一の祖国とする理念を精神的基盤としてきた。これらは日本という異国の地で経てきた差別に対抗する上でも民族的尊厳を守る支えになってきており、共同体統合の求心点として機能してきた。2014年5月に東京の朝鮮人文化会館で開催された朝鮮総連の全体大会の様子 / 聯合ニュースこの共同体は、世襲による独裁という北朝鮮の否定的な側面を抱えつつも「祖国統一」という民族的念願を掲げ、分断固着化の動きに対して倫理的優位を占めることで共同体の正統性を守ってきた。こうした優位性は、植民地支配と旧宗主国の差別に抗った歴史的経験に根ざす民族統一理念に由来する。 しかし、金正恩総書記が昨年、韓国を「第一の敵対国」、「別の国家」と規定する「二つの国家論」を公式化し、統一放棄を宣言したことは、この同胞社会が拠り所としてきた精神的基盤、すなわちアイデンティティを根本から否定することに他ならない。こうした政策転換は、植民地支配の歴史を克服する意志を込めた民族統一理念に基づく倫理的優越性の土台そのものを破壊した。統一がイデオロギーのみならず、現実の政治的目標としても放棄され、韓国を敵対的な外国と見なすことで「民族の正義」としての統一論は形骸化し、その倫理的資本を失効させてしまった。独裁体制の負の側面を統一という理想で覆い隠してきた構図が崩れ、露骨なまでの体制追従だけが残った現状は、彼らのコミュニティ内部に深刻なイデオロギー的混乱と活動の意味そのものに対する深刻な動揺を広範に引き起こしている。 そして、この混乱が最も直接的に影響を及ぼしたのは、同胞社会の民族教育機関である朝鮮学校である。繰り返すが、朝鮮学校は共同体の世代継承と再生産を担当する装置であり、教育内容は統一国家の未来と指導者に対する絶対的忠誠に主眼を置いてきた。しかし、「二つの国家論」による統一放棄はこうした教育内容の核心を根こそぎ奪い去ってしまった。歴史、地理、思想などの領域で教育の核心を失った状況は、教育関係者らに教科内容の抜本的再構成という前例なき課題を背負わせ、教育者としての拠点を奪い、「大混乱」という表現が出るほどの機能不全を引き起こしている。持続的な学生減少傾向に悩まされている朝鮮学校は、この政策転換によって日本政府の苛酷な差別政策に匹敵し,もしくはそれを凌駕する 深刻な打撃を受けている。 こうした状況は学校共同体に属す人々に深刻な「アイデンティティ・クライシス」をもたらした。「統一」を教育の中核に据えて きたからである。彼らはいま、自らをどのように再定義すべきかという根本的な問いに直面している。 さらにこれは「民族教育とは何か」という問いの再燃でもある。民族教育とは本来、在日コリアンの自生的概念であると同時に課題でもあった。植民地支配と旧宗主国で経験する差別に立ち向かい、自らの尊厳を守るための歴史的経験に根差すものである。しかし、総連の組織化過程でそれは北朝鮮の一人独裁理念と結びつき、民族文化の継承と北朝鮮に対する絶対的忠誠、すなわち民族教育機関であると同時に国民教育機関という性格を色濃く帯びるようになった。今般の「統一放棄」により、対外的には「民族教育」を標榜する側面と「北朝鮮の国民教育機関」という内実を同時に内包する構造的矛盾がこれまで以上に鮮明になったのである。 それでもなお朝鮮学校が民族の言語と文化、歴史を継承し、在日コリアンとしてのアイデンティティを育む重要な場という事実に変わりはない。それゆえ、北朝鮮との政治的結束がこれほどまでに強固でなかったなら、わずか二世代にして民族語と文化を失った在日コリアンがどれほど多くの子どもたちをここに送り、民族的資産を豊かに育むことができただろうか。もちろん、当時の国際情勢や朝鮮学校の存立条件上、極めて現実性に乏しい想像に過ぎないのだが... 一方、こうした混乱と矛盾は、彼らの同胞社会内部で体制の実状や「北への追従」に対する批判を表出させるきっかけともなっている。この期に及んでも体制に盲目的追従を続けることに対する懸念が噴出する中、一部の朝鮮学校では統一旗を掲げた事例も現れるなど、共同体内部の葛藤と多様化の様相を示している。 彼らが北朝鮮の動きによって困難に陥ったのは今回が初めてではない。2002年の朝日国交正常化交渉の席上において、金正日国防委員長(当時)が日本人拉致の事実を認めたことは、日本における北朝鮮の事実上の代表機関である総連およびその構成員を窮地に追い込み、その活動を著しく制約した。この事件は、北朝鮮指導部の予測不能な判断が、総連系同胞社会の安定と日本国内での立場にどれほど深刻な打撃を与えるものか、その構造的脆弱性を如実に示している。さらに、北朝鮮が日本にとって現在まで唯一の未修好国であるという事実は、総連という組織に対する恒常的な政治圧力を生み出している。こうした圧力は総連だけでなく、在日コリアン総体に対する差別と偏見を維持·強化させる機能を持つ一方、彼らにとっては逆説的に共同体内部の結束を強化する役割も果たしてきた。 今日の「二つの国家論」による危機は、このような過去の特定事案に対する対応とは異なり、「統一」というイデオロギーとそれに基づく倫理的優越性、そして共同体の根幹である「民族教育」の神話そのものを否定する。これは彼らのアイデンティティと存立基盤を根底から揺るがす「存在論的危機」である。 しかし、こうした深刻な状況にもかかわらず、総連と朝鮮学校を基軸とする同胞社会が直ちに瓦解すると短絡的に考えるのは早計である。共同体の存続を下支えする構造的要因が健在だからである。中核をなすエリート層は、共同体内での活動のほか、日本の主流社会でも活動しており、彼らの言動は日本の市民社会において一定の影響力を有している。また、規模が持続的に縮小してはいるものの、朝鮮学校の他にも傘下組織や関連企業などが構成員に働き口を提供しており、これらもまた、代案的求心点として機能している。さらに、北朝鮮に家族を送った多くの同胞にとって、組織からの離脱は同胞社会との断絶と同義であり、映画<かぞくのくに>に描かれたように、事実上の人質として北朝鮮に暮らす血縁の生命と安全が脅かされるという絶望的な状況が組織への帰属を維持させる重圧として作用している。それらに加え、朝鮮学校を支持する一部の日本市民と知識人が依然として存在する点も総連系同胞社会が完全に孤立しない緩衝材の役割を担っている。彼らは朝鮮学校を民族教育機関としての側面のみ注目し、国民教育機関という別の側面には目を向けない、もしくは知りつつも植民地支配に対する贖罪意識ゆえ、口を閉ざす傾向がある。こうした要因が同胞社会の粘り強さ、すなわち、どれだけ厳しい状況に置かれても決して崩壊しない構造を形成している。 これまでの論議を整理すると、総連を中心とした同胞社会は、北朝鮮体制からの圧力、コミュニティ内部の混乱、日本社会からの政治的圧力といった複合的な構造的要因の下、完全な崩壊に至るというよりは、その形態と性格が漸進的にではあるものの、変貌せざるを得ない状況にあると言えるだろう。「二つの国家論」は、北朝鮮の最高権力者自らが拉致という国家犯罪を認め、日本社会に与えた衝撃をはるかに上回る大きな意味を持つ。この根源的衝撃が共同体の根幹である民族教育に今後どのような変化をもたらすのか、その帰趨は注目に値する。民族教育における両輪の一つである統一理念を失い、いわば「片輪走行」になった民族教育が、この苦境の中でもその意義を保つことができるのか。あるいは過去に民族教育を支援したという北朝鮮国家の「恩義」という政治的修辞によって同胞社会の動揺を鎮めることができるのか。北朝鮮国家による統制強化の試みの一環とも見られる昨今の頻繁な総連および朝鮮学校関係者の訪朝の動きも、こうした文脈で読み取るべきである。 総連創立70周年は、過去に対する省察と未来に向かうための方向転換をこの共同体に厳しく求める「運命の分水嶺」となるだろう。彼らが果たしてこの危機にどのように向き合うのだろうか。また、国家に依拠しない真の在日コリアン固有の「主体的」民族像を描き出すことができるのだろうか。大統領選挙を控え、北朝鮮との関係再定義という喫緊の課題に直面する韓国社会もまた、こうした動向をいつにも増して注視すべきである。
25.05.23